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CRM導入でLTVを向上させるには?仕組みと方法を事例で解説

執筆者 池村真澄

CRM LTV向上_top

📋 この記事の要点

  • CRM導入でLTVを向上させるには、購入単価・収益率・購買頻度・継続期間の4要素それぞれに働きかける施策を設計することが起点になる
  • 購入単価は、利用状況データにもとづくアップセル・クロスセルの設計で高められる
  • 購買頻度は、行動データから再購入の兆しを捉えて接触することで上がる
  • 継続期間は、解約予兆の検知と部門をまたいだ一貫した対応によって伸びる
  • CRM選定では、接点データの一元管理・予兆の可視化・AI活用が判断軸になる

この記事は14分で読めます

【9社の導入事例付き】初心者向けCRM導入ガイド

【9社の導入事例付き】初心者向けCRM導入ガイド

顧客管理の課題を解決したいBtoB事業者様向けCRM導入のポイントに9社の導入事例を合わせたガイドです。

※HubSpotが2023年1月19日に開催したウェビナーの動画とeBook、HubSpot導入事例がセットになった資料となります。

 

新規顧客の創出にかかるコストが上がるなか、既存顧客からの収益をどう伸ばすかが経営課題です。LTVを高めるには、解約の兆しを早く捉え、顧客ごとに適した提案を適切なタイミングで届ける仕組みが欠かせません。その基盤となるのがCRMです。

本記事では、CRMがLTVに効く仕組みを4つの観点に分解し、具体的な方法から事例、選定基準までを解説します。

CRMがLTV向上につながる4つの観点

CRMがLTV向上に効くのは、LTVを構成する4つの要素すべてに作用するためです。まずはCRMとLTVの意味を整理したうえで、どの要素にどう寄与するのかを見ていきましょう。

本記事では、LTVを理解するための基本モデルとして、次の4要素に分けて説明します。実際の算出方法は、事業モデルや社内の定義によって異なります。

LTV = 購入単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間

CRMに蓄積した顧客データや関連機能を活用することで、4つの要素を改善する施策を設計できます。

  • 購入単価:購入履歴や利用状況から、適した上位プランや関連商品を抽出できる
  • 収益率:一元化・自動化により対応工数を減らせる
  • 購買頻度:行動データから、再購入や追加検討の兆しを捉えられる
  • 継続期間:対応履歴の共有により、一貫した体験を提供できる

CRMがLTV向上につながる4つの観点

LTV向上というと、SaaSやサブスクリプションビジネスにおける購買頻度や継続率などにとくに注目がいきがちですが、実際にはクロスセル・アップセルによる購入単価アップやコスト削減による収益率アップなども含めた多角的なアプローチが不可欠です。

 

購入単価アップ

CRMに蓄積・連携された顧客の行動や利用状況を分析することで、顧客のニーズに応じた提案を設計しやすくなります。こうした提案により、購入単価の向上が見込めます。

従来の管理手法では購買履歴などによる一律の提案が一般的でした。CRMを活用することで、Web閲覧や製品利用、問い合わせの詳細データなどを一元管理でき、「顧客が今まさに何を求めているか」という関心の兆しをピンポイントで捉えられます。

顧客の文脈を深く理解し、必要とする瞬間に有益な解決策として関連商品を提案できれば、クロスセル・アップセルの成約率アップにつながります。

 

収益率アップ

CRMは、顧客ごとにかかっているコストが可視化でき、収益率の向上に寄与します。

従来は問い合わせ履歴と商談の進捗が別々に残り、1件の取引にかかった手間と成果を突き合わせるのが難しい状況でした。CRMを活用すれば、どの顧客に時間がかかり、どの施策が成果につながったのかを同じ軸で確認できます。

コストの内訳が見えれば、削る対象と残す対象を判断できます。売上の規模を変えないまま手元に残る利益を押し上げられる点が、CRMが収益率アップに効く理由です。

 

購買頻度アップ

CRMは、次のアクションを適切なタイミングで実行できるようにすることで、購買頻度を高めます。例えば、下記のような設計です。

  • 購入後のお礼メールを自動で送る
  • 一定期間取引のない顧客にリマインドを届ける

加えて、行動データを分析すれば、購買頻度が落ちている顧客を早い段階で特定できます。関心が薄れつつある顧客へ個別の案内を届けることで、取引を再び活性化させられるでしょう。

 

顧客定着率アップ

継続期間を伸ばすには、顧客満足度を高い状態で維持することが欠かせません。CRMはこの「満足度の維持」を支える基盤として重要な役割を果たします。

CRMは、購入履歴や過去の問い合わせ、利用状況といったすべての顧客データを一元管理します。これにより、担当者が変わっても過去の経緯を即座に把握できるため、「何度も同じ説明を求められる」といった顧客のストレス要因を取り除くことが可能です。

CRMを通じて、「自分を理解してくれている」という安心感を与え、スムーズな問題解決を提供することが、顧客との長期的な関係構築につながるのです。

 

CRMでLTVを向上させる方法

CRMを活用してLTVを向上させる方法は、前章の4つの観点を実際の業務に落とし込むことで、次の4つに整理できます。

観点 具体的な打ち手 判断に使うデータ例

購入単価

利用状況から提案の対象と時期を絞り込む

契約プラン、機能別の利用率、購入履歴

収益率

問い合わせ対応を仕組み化して工数を減らす

問い合わせ内容の件数、施策別の受注率

購買頻度

行動データをもとに再提案の合図を決める

購買間隔、Web閲覧履歴、メールの反応

継続期間

解約予兆をスコア化して先回りする

ログイン頻度、問い合わせ内容、担当者情報

 

購入単価|利用状況から提案の対象と時期を絞り込む

アップセルやクロスセルなどにより購入単価を上げるためには、「誰に」「いつ」提案するのかをデータで決めることが重要です。

全顧客へ一斉に案内を送る方法では、必要としていない顧客にも届いてしまいます。利用状況を条件として設定しておけば、機能が足りていない顧客だけを抽出できます。

【進め方】

  • 上位プランへ移行した既存顧客に共通する利用状況を洗い出す
  • その条件をCRM上のリストとして登録し、該当した顧客を自動で抽出する
  • 不足している機能と、それによって解決できる課題をセットで案内する

具体例|アカウント数を条件にした上位プランの案内

  • 契約アカウント数の上限に対し、利用率が80%を超えた顧客を毎週抽出する
  • 「増員時に上限へ達する見込み」を伝えたうえで、上位プランを案内する
  • 案内の目的は売上ではなく、顧客の運用が止まらない状態を保つことに置く

クロスセルの場合は、既存顧客の購買パターンから組み合わせの傾向を確認しましょう。よく一緒に購入されている商品が見えてくれば、提案の精度は高まります。

 

収益率|問い合わせ対応を仕組み化して工数を減らす

収益率は、同じ売上からより多くの利益を残す工夫によって高まります。コスト削減として取り組みやすい業務の一つが、問い合わせ対応の効率化です。件数の多い質問から順にFAQへ落とし込めば、担当者が個別に対応する件数そのものを減らせます。

【進め方】

  • 過去半年の問い合わせをCRM上で内容別に分類し、件数の多い順に並べる
  • 上位20件をFAQやヘルプ記事にまとめ、チャットや自動返信から案内する
  • 自己解決できた割合を毎月確認し、解決に至らなかった質問を書き足す

具体例|問い合わせ分類からFAQを整備し工数削減

  • 分類の切り口を「操作方法」「仕様確認」「トラブル」「契約・請求」の4つに設定
  • 上位20件について、記事化と同時に、チャットの初期回答で該当記事を提示する導線をつくる
  • 毎月、自己解決率と「解決しなかった」と回答された質問を確認して追記

問い合わせ対応の仕組み化は単なるコスト削減にとどまらず、浮いた工数を成長施策へ投資することで、中長期的な収益率の向上ももたらします。

 

購買頻度|行動データをもとに再提案の合図を決める

購買頻度を上げるポイントは、「顧客が次を検討し始める瞬間」を捉えることです。検討のタイミングは、顧客の行動に表れます。あらかじめ「この行動があれば連絡する」という合図を決めておけば、機会損失を防げます。

顧客の行動 読み取れる状態 とるべきアクション

料金ページを再訪した

追加購入や増席を検討している

担当者へ通知し、当日中に連絡する

資料を再ダウンロードした

社内で検討が始まっている

稟議に使える資料を追加で送る

通知が届く仕組みまで自動化で組んでおけば、担当者が能動的に画面を確認しなくても動けます。なお、届ける内容は一律の案内ではなく、顧客が閲覧していた情報に沿ったものにすると反応率が高まります。

 

継続期間|解約予兆をスコア化して先回りする

継続期間を伸ばすには、解約の意思が固まる前に状態の変化を捉える必要があります。予兆は単独の指標では判断しづらいため、複数を組み合わせてスコア化します。点数の高い顧客から順に対応すれば、限られた人数でも優先順位を見誤りません。

予兆の指標 確認する内容 配点の例

ログイン頻度の低下

前月比で半減していないか

3点

主要機能の利用停止

中心的な機能が使われ続けているか

3点

先方の担当者交代

社内の推進者が変わっていないか

2点

問い合わせ内容の変化

解約条件に関する質問が出ていないか

2点

具体例|スコア5点以上の顧客への対応

  • 週次でスコア5点以上の顧客を抽出し、カスタマーサクセスが一覧で確認する
  • 利用が止まっている機能を特定し、活用方法の提案を目的に連絡する
  • 引き止めではなく、成果が出ていない原因の把握を目的に置く

あわせて整えたいのが、導入直後のオンボーディングです。最初の数か月で価値を実感してもらえるかどうかが、その後の継続期間を左右します。

 

AI活用でLTV向上施策の実行スピード・精度を高める

AIは、ここまで紹介した4つの打ち手の実行スピード・精度を高める役割を果たします。

打ち手 AIに任せられること LTVへの効き方

提案の対象を絞り込む

利用状況を分析し、上位プランが合う顧客を抽出する

提案の機会を逃さず、購入単価が上がる

問い合わせ対応を仕組み化する

AIエージェントが一次対応を担い、自動で回答する

対応工数が減り、収益率が上がる

再提案の合図を決める

行動データから検討再開の兆しを検知し、通知する

接触の遅れがなくなり、購買頻度が上がる

解約予兆をスコア化する

複数の指標から予兆を判定し、優先順位をつける

先回りの対応ができ、継続期間が伸びる

とくにAIを使って効果を出しやすいのが、提案文の作成です。抽出した顧客リストに対して一人ずつ文面を書く作業は、担当者の負担が大きく、後回しになりがちです。AIに顧客ごとの利用状況を参照させれば、その顧客の状況に応じた下書きを短時間で用意できます。

具体例|アップセル提案のメール下書きをAIに任せる
  • 対象顧客の契約プラン、利用率、直近の問い合わせ内容をAIに参照させる
  • 「不足している機能」と「それによって解決できる課題」を軸に下書きを生成する
  • 担当者は事実関係を確認し、関係性に応じて文面を調整して送信する
  • 送信後の開封や返信内容をCRMに記録し、次の下書きの精度を上げる

また、AIに任せる範囲を決めておくことも重要です。AIが担うのは、あくまでも対象の抽出と下書きの作成、優先順位づけまでです。最終的に何を提案するのか、どこまで踏み込むのかという判断は人が担います。

顧客との関係を長く保つのは、その判断の積み重ねです。効率化をAIが支え、関係づくりを人が担う、という組み合わせが、持続的なLTVの向上につながります。

 

CRM活用でLTVが向上した成功事例

CRMの活用によって既存顧客との関係を深めた企業は、実際にどのような取り組みを進めたのでしょうか。ここでは2社の事例を紹介します。

 

ピー・シー・エー株式会社|MRRが5倍以上に成長

ピー・シー・エー株式会社は、企業の経理業務に関わる基幹業務パッケージソフトウェアを開発・販売する企業です。

 

抱えていた課題

  • 販売代理店を経由する取引が中心で、利用者の情報を間接的にしか把握できていなかった
  • マーケティング部門と営業部門でデータの管理方法が分かれ、連携に手間がかかっていた
  • 当初は創出した見込み客の「数」を指標に置いたため、対応しきれない状態に陥った

 

取り組みと成果

CRMを導入し、部門をまたいで顧客データを一元管理する体制を構築しました。あわせて、指標を「数」から「質」へ転換。Web上の行動履歴から優先度を見極め、必要な顧客にアプローチする運用へ改めています。

過去の対応履歴を全員が参照できるようになったことで、数年前の案件を再開しやすくなりました。担当者が退職した場合でも、以前のやりとりを踏まえた対応を引き継ぐことができるように。顧客情報は販売代理店とも共有され、垣根を越えた提案が可能になりました。

こうした取り組みの結果、導入から約2年でクラウドモデルのMRR(月次経常収益)は5倍以上へと積み上がっています。

参考:HubSpot導入事例 | ピー・シー・エー株式会社

 

株式会社SocialDog|自己解決率90%超を達成

株式会社SocialDogは、SNS運用を効率化するマーケティングツール「SocialDog」を提供する企業です。予約投稿やソーシャルリスニング、分析といった機能を国内のユーザーへ届けています。

こちらは、自己解決率向上が対応工数を下げ、収益率の改善につながった事例です。

 

抱えていた課題

  • サポートの専門組織を設ける余裕がないなかで、対応品質を維持する必要があった
  • 繁忙期や時間帯によって、対応の速さや品質にばらつきが生じていた
  • ヘルプ記事のどこから優先して改善するのか、判断する材料がなかった

 

取り組みと成果

同社は、既存のヘルプ記事や製品仕様書を学習ソースとしたAIエージェントを自社サイトへ設置。運用開始から数週間の時点では、正解率57%という状態でしたが、そこから週次で回答を1件ずつ確認し、誤りがあればヘルプ記事を修正する作業を重ねました。

改善のペースは月に3〜4件。この地道な積み重ねにより、2025年通年の自己解決率は90%超えに。月間1〜3万円の運用コストで、24時間の即時応答を実現しています。

参考:【HubSpot導入事例】株式会社SocialDog

 

LTV向上につながるCRMの選び方

LTV向上を目的にCRMを選ぶ場合は、機能の多さよりも「何ができる状態になるか」が判断軸になります。ここでは、これまで紹介した施策を成立させるために欠かせない3つの基準を紹介します。

基準 確認したいこと

データの一元管理

マーケティング・営業・サポートの記録を、同じ画面で参照できるか

予兆の可視化

利用状況や行動履歴から、状態の変化を検知して通知できるか

AI活用

蓄積したデータをもとに、分析や提案の下書きを自動化できるか

 

顧客接点のデータを一元管理できるか

最初に確認したいのは、購入前の行動から購入後の問い合わせまでが、同じ顧客の記録としてつながるかどうかです。

部門ごとにツールが分かれていると、アプローチの重複や情報の抜けが起こりやすくなります。顧客から見れば、同じ会社から異なる文脈で連絡が届く状態です。

既存の基幹システムやMAツールと連携できるか、API対応の状況もあわせて確認しましょう。データが1か所に集まっていることが、以降の2つの基準の前提となります。

 

解約予兆や購買意欲を可視化できるか

次に確認したいのは、状態の変化を指標として設定し、追跡できるかどうかです。

利用頻度や問い合わせ内容の変化を数値で捉えられれば、フォローの優先順位を判断できます。条件に合致した際に担当者へ通知が届く仕組みを組めるかどうかも、運用の負担を左右する要素です。

あわせて、自社独自の判断基準を項目として追加できるか、といった柔軟性も見ておきましょう。可視化できる環境が整うことで、先回りした対応が可能になります。

 

AI機能でデータを活用できるか

3つ目の基準は、蓄積したデータをAIが参照できる状態で保持できるかどうかです。

分析や要約、提案の下書きなど、どの業務をAIに任せられるのかを具体的に確認します。追加費用の発生条件や、無料で試せる範囲があるかどうかも判断材料です。

なお、AIの精度は元となるデータの整備状況によって大きく変わります。AI機能の有無だけで選ぶのではなく、データ基盤としての使いやすさとあわせて評価しましょう。

 

LTV向上は顧客データの一元化から始まる

LTVを構成する4つの要素は、それぞれ独立して動くものではありません。上位プランを提案する相手を絞り込むことも、解約の予兆を捉えることも、元をたどれば同じ顧客データに支えられています。そのため、CRMを活用してLTV向上を目指すなら、施策数を増やす前に、まずは顧客の全情報が1か所に集まる状態をつくることが先決です。

また、4つの要素に共通するのは、判断の基準をあらかじめ決めておく点です。上位プランを案内する利用率の水準、連絡のきっかけとする行動、予兆と見なす指標の配点といったものが、その基準にあたります。

そして、これらの基準の基盤となるのが、顧客データの精度です。行動履歴・商談の記録・問い合わせの内容が同じ場所にそろって初めて、顧客の状態を正しく読み取れます。LTV向上の取り組みは、機能を増やすことではなく、この状態をつくるところから始まります。

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CRMとLTVに関するよくある質問

CRM導入でLTVはどの程度向上しますか?

向上の幅は業種や運用状況によって異なるため、一律の数値は示せません。ただし実際の事例では、導入から約2年でMRRが5倍以上に成長したケースもあります。重要なのは導入そのものではなく、蓄積したデータをどの施策に、どの頻度で反映するかという運用設計です。

 

LTVはどのように計算すれば良いですか?

一般的には「購入単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間」で算出します。サブスクリプション型のサービスでは、月次の平均単価と平均継続月数を用いる方法も広く使われています。まずは自社の事業モデルに合う式を一つ決め、同じ基準で継続的に測ることが大切です。

 

少人数の組織でもCRMは効果がありますか?

効果は見込めます。実際に、専任のサポート組織を持たない企業がAIエージェントと組み合わせ、自己解決率90%超を達成した事例もあります。人手が限られる組織ほど、対応の自動化と優先順位づけによる恩恵は大きくなるといえるでしょう。

 

【9社の導入事例付き】初心者向けCRM導入ガイド

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