ECサイト向けCMS(コンテンツ管理システム)には、商品管理機能や検索機能、決済サービスなどECサイトに必要な機能がデフォルトで搭載されているため、ECサイト構築や運営の効率化に役立てられます。また、Webサイト構築の開発費用や期間を削減でき、販売や管理業務の効率化にもつながります。
ただし、さまざまな製品が存在するため、導入の効果や選び方のポイントを理解し、自社に合う製品を選ぶことが重要です。
本記事では、ECサイト向けCMSを導入するメリットとデメリット、選び方、おすすめの製品などを解説します。
ECサイトの構築にCMSを活用するメリットは次の5つです。
それぞれのメリットを解説します。
専門スキルがなくても簡単に導入できる点が、CMS最大のメリットです。
ゼロからECサイトを構築しようとすると、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Ajaxなどのプログラミングの知識が必要になります。ECサイト向けCMSをサーバーにインストールすれば、このような専門知識がなくてもECサイトを構築できます。
商品管理機能や検索機能、決済サービスなど、ECサイトに必要な機能がデフォルトで実装されている点も大きなメリットです。新たな機能を加えたい時も、多くの場合はプラグインを追加するだけで完了できます。
EC向けに限らず、CMSそのものの特徴が、誰でも簡単に更新作業ができる点です。複雑な操作は不要なため、特定の担当者に依存してしまう属人化を防ぐことができます。ECサイトの担当者以外でも、ある程度操作できる従業員が複数名いれば、急なトラブルにも対応しやすくなります。
フルスクラッチ(ゼロから行うシステム構築)には及ばないものの、CMSでもプラグインの導入やCSSの記述によって、ある程度のカスタマイズが可能です。
カスタマイズが必要となる場合は、用意されているプラグインの充実度を導入の検討段階で確認しておくと良いでしょう。
フルスクラッチでECサイトを構築するには、高額な開発費用がかかります。要件定義からシステムの設計、デザイン案の構築、機能の実装、テストまで、すべての工程を実施しなければならないためです。
一方、CMSでは、ベンダーが構築した既存のパッケージやシステムの仕様をそのまま利用できるため、費用を抑えやすい傾向があります。
ECサイトの構築にCMSを活用するデメリットは次の3つです。
それぞれのデメリットを解説します。
CMSは、フルスクラッチと比べるとカスタマイズできる部分が限られます。サービスによっては、全くカスタマイズできないケースがあるため、デザインの柔軟性やシステムの拡張性を重視する場合は不向きです。
オープンソース型CMSの場合、ベンダーが提供するCMSではないため、サポートが受けられないケースがあります。オープンソース型CMSとは、ソフトウェアのソースコード(プログラミング言語で記述された文字列)が無償で一般公開されており、自由に編集が可能なCMSです。
また、一部のオープンソース型CMSは脆弱性が分析されやすく、セキュリティ面にやや不安が残る製品があります。厳格な要件を満たす必要があればフルスクラッチを検討するのがおすすめです。
CMSを利用してECサイトを構築する場合、開発費は抑えられる一方で運用コストが高額になる可能性があります。
例えば、サーバーのレンタル料やドメイン使用料、CMSのサービス利用料などがかかります。CMSの運用期間が長くなるほどこれらの費用は積算していくため、運用期間によってはフルスクラッチよりも高額になる可能性があります。
そのため、CMSを利用したECサイトの構築は、長期的な観点で予算を設定することが重要です。
ECサイト向けのCMSを選ぶ際は、次の4つの比較ポイントを理解しておくと、自社にとって相性の良い製品を選びやすくなります。
ECサイトの構築には、CMSにECサイト向けの機能が搭載されていることが欠かせません。
一般的なWebサイト向けのCMSには、記事コンテンツの編集やテンプレート、マーケティングオートメーションなどの機能が搭載されています。一方で、ECサイト向けのCMSに搭載される代表的な機能は、商品検索やショッピングカート、決済などです。
なお、ECサイト向けの機能は、フロントエンド機能とバックエンド機能の2種類に分けられます。フロントエンドはショッピングカートや決済などの顧客の利便性に関する機能で顧客の満足度に影響します。バックエンドは顧客管理や商品管理など、管理業務を効率化する機能で、業務の効率性に影響します。
製品ごとに搭載されている機能が異なるため、複数の製品を比較・検討することが大切です。
海外で商品やサービスを販売する際は、越境EC向けの機能が搭載されているCMSを選ぶ必要があります。越境EC向けのCMSには、多言語や外貨への対応、現地の税制に合わせた消費税計算などの機能が搭載されています。
国内で商品やサービスを販売する場合は、越境EC向けの機能は不要です。ただし、将来的に越境ECを行う予定があれば、オプションやプラグインによる機能拡張の可否を確認しましょう。
このように、販売対象地域によっても適切なCMSの種類が異なります。
CMSは製品によって、ストレージ容量(データ保存領域の容量)が異なります。
ECサイトを運用する際は、商品用の画像や動画、販売ページなど、さまざまなデータを利用します。取り扱う商品の点数が増えるなどしてECサイトの規模が拡大すると、ストレージ容量が不足するケースも珍しくありません。ストレージ容量が不足するとサーバーの負荷が高まり、ページ表示速度の低下やサーバーダウンなどの大きなトラブルに発展する可能性があります。
一般的に、同一のCMSであってもプランごとにストレージ容量が異なります。容量を増やしたい場合や、減らしたい場合に、プラン変更やオプション選択が可能かどうかも確認しておきましょう。
ECサイトを構築する際は、独自の店舗コンセプトをデザインに反映し、ユーザーが使いやすいUIを設計します。そのため、要件に沿って柔軟にデザインを調整できるCMSを選びましょう。
ECサイト向けCMSの多くには、デザイン設定用のテンプレートが用意されています。テンプレートが豊富であれば細かい要件に対応しやすく、独自のサイトデザインを柔軟に設計できます。
デザインにこだわる場合は制作会社に外注するのも一案です。デザイン作成にかかる費用や工期などを見積ったうえで、余裕をもって依頼することをおすすめします。
ECサイトにおすすめの10のCMSと、それぞれの特徴、導入メリットを解説します。
出典:Shopify
Shopifyは2004年にカナダで創業されたECサイト向けCMSで、日本へは2017年に参入しました。2024年12月時点で170以上の国にストアがあり、全世界での経済活動は4,440億ドル(約68兆円)にものぼり、米国におけるEC全体の10%を占めるとうたっています。
最大の特徴は、世界中の決済方法や言語をカバーしている点です。世界175か国をカバーし、多言語・多通貨にも対応しています。また、本体の機能はシンプルですが、拡張プラグインが8,000以上あり、SNS連携から配送手配、SEO対策、送付状印刷まで、さまざまな機能を実装可能です。
実績と機能の豊富さにおいてトップクラスを誇ります。プラグインを駆使して自社独自の越境ECサイトを構築したい方におすすめのサービスです。
出典:EC-CUBE
EC-CUBEは、株式会社イーシーキューブが提供する、国産のECサイト向けCMSです。推定稼働店舗数は2024年12月時点で3万5,000件を超え、ネットショップ利用数ナンバーワンをうたっています。
最大の特徴は、オープンソースで利用料が無料である点です。また、日本製で導入事例も多いため信頼性が高く、利用者コミュニティも形成されていて、欲しい情報を調べやすいのも利点です。導入事例には、大企業から個人レベルまで、幅広い実績が多数掲載されています。
2006年のリリース以降、有料無料を問わずさまざまな関連サービスが整備されており、このCMS一つで大体の要望を満たせるでしょう。
出典:makeshop
Makeshopは、GMOメイクショップ株式会社が提供するECサイト向けCMSです。法人ショップの導入実績は、2024年12月時点で1万2,000社以上、顧客満足度は98%をうたっています。
オープンソースではないECサイト向けCMSのなかでは、低価格な部類に入ります。さらに、提携サイト経由で購入した場合を除き、販売手数料が無料です。販売数が増えるほど利益率が向上する料金プランが採用されている点も魅力です。
しっかりとした運用サポートのもと、低価格で高機能なECサイトを作りたい方におすすめです。
出典:Ecbeing
ecbeingは、株式会社ecbeingが提供する中堅・大手ECサイト向けのCMSです。1999年の発売以来、エービーシー・マートやカルビー、JR、タカラトミー、コーセー、タニタなど、大手企業を中心に1,600件以上の導入実績があり、ECサイト向けCMSの最大手といえます。
他社のCMSがシステム提供にとどまるケースが多いなか、ecbeingは導入後のマーケティングにも力を入れているのがポイントです。SEOやキャンペーンのA/Bテストをはじめ、さまざまな施策を価格レンジに応じて提案・実行してくれます。
相応の予算を投下でき、導入のみならずアフターフォローやマーケティングなど、運用パートナーとしてのサポートを希望する方におすすめです。
出典: CS-Cart
CS-Cartは、2005年にロシアでリリースされたオープンソース型のCMSです。導入実績は5万件を超え、大規模ECサイト向けCMSが提供するような機能を低コストで利用できます。
海外製オープンソースにもかかわらず、日本語のサポート対応が充実している点が特徴です。
また、ユーザーの会員ランク機能があり、ランクごとに割引率やポイントを付与したり、グループを分けたりすることも可能です。囲い込みのための標準機能が搭載されている点もメリットといえます。
会員向けのコミュニティ機能を軸に、越境ECサイトを構築したい方におすすめです。
出典:Kuroco
Kurokoは、株式会社ディバータが提供するECサイト向けCMSで、かつては「RCMS」として提供されていた製品です。充実した管理機能を備えており、金融機関・商社・メーカー・IT企業など、上場企業から中小企業まで6,000社以上に導入されています。
従来はECサイトに限らない汎用的なCMSとして提供され、2015年10月にECサイト向けの機能が標準搭載されました。ブランドサイトのコンテンツをEC用途でも一元管理できる点が特徴です。日本語マニュアルも用意されており、スムーズに導入できます。
充実した記事コンテンツなどによるブランディングサイトの一環として、ECサイトも運営したい方におすすめです。
出典:コマース21
Commerce21は、株式会社コマースニジュウイチが提供するECサイト向けCMSです。1999年のリリース移行、主に大企業向けCMSとして提供され、ディノスやブックオフ、トイザらス、ミズノなど大手企業の導入実績があります。
オープンソース型であるため、技術力に自信のある方は自社でサイトメンテナンスを行えます。また、マニュアルをはじめとする各種サポートも万全です。
価格は個別見積もりとなり、要件によって導入費用が変動します。スクラッチによるカスタマイズを前提に、大企業が導入するECサービスとしておすすめです。
Adobe Commerceは、米ロサンゼルス発のオープンソース型ECサイト向けCMSです。「Magento」の名称で2007年にリリースされ、2018年にAdobeにより買収され、現在は「Adobe Commerce」として提供されています。
Adobe Commerceは米国や欧州を中心に利用されています。日本よりも複雑な税制度にも対応しているため、多言語・多通貨対応はもちろん、多税率対応も実現しています。複数のサイト管理ができる「マルチサイト管理」機能も搭載されており、国ごとのサイト運営にも対応可能です。
将来的に複数サイトを立ち上げてビジネスの拡大を目指し、まずはカスタマイズに慣れたい方におすすめの越境ECサイト向けCMSです。
Live Commerceは、株式会社デジタルスタジオが提供する国内発の越境ECサイト向けCMSです。
タレントやインフルエンサーがライブ動画を配信しながら商品を販売する「ライブコマース」を支援するものではなく、あくまで越境ECのための機能を揃えた製品です。Google ショッピングやFacebookでの販売機能など、最新の機能も次々に提供されています。
越境対策にフォーカスした機能を標準搭載しており、ECサイトの開設後からグローバルにビジネスを展開できます。
国内でサポートを受けながら、越境ECサイトを構築したい方におすすめです。
出典:osCommerce
osCommerceは、2000年にドイツでリリースされたオープンソース型のECサイト向けCMSです。海外発のサービスのなかでも歴史が古く、2024年12月時点で数十億ドル規模のグローバルビジネスの機会を生み出しています。
最大の特徴は、拡張機能の数です。専用のアプリストアでデザインやマーケティング、SEOなどに関する拡張機能が豊富に提供されており、無料で実装できるものもあります。
また、公式サイトでサービス情報やアイデアを共有できる「フォーラム」が設けられており、30万人を超えるメンバーが参加しています。コミュニティが強固であり、オープンソースの進化も着実といえるでしょう。
日本語対応もしているので、拡張機能を駆使してカスタマイズされた越境ECサイトを構築したい方におすすめです。
ここからは、CMSを使ってECサイトを効果的に運用する3つのポイントを解説します。
ECサイト向けのCMSは、製品によって導入形態や価格、機能などが大きく異なります。自社にとって最適なCMSを選ぶには、あらかじめ明確な導入目的を設定し、それに沿って要件を洗い出すことが重要です。
例えば、海外での売上高比率を高めることが目的であれば、越境EC向けの機能が欠かせません。
目的を設定する際は、ECサイト運営における自社の課題やボトルネック、将来的なプランを洗い出しましょう。課題やボトルネックが複数存在する場合は、個別に優先順位を設定するのがおすすめです。
ECサイト向けCMSの運用で生じやすいのが、特定の担当者に業務が依存してしまう属人化です。
属人化が発生すると、商品紹介ページの公開が、商品発売日に間に合わず機会ロスが生まれたり、担当者の不在時に商品画像を探すのに手間取ったりするなど、さまざまな問題に発展する可能性があります。
属人化を防ぐには、マニュアルを作成して複数の担当者で業務を分散することが重要です。また、定期的な研修やトレーニングなどで組織全体のスキルレベルを高め、業務品質を均一化するのも効果的です。
ECサイトの運用時は、キャンペーンや特集の実施にあわせて商品ページとは異なる例外的なページを作成する機会が少なくありません。しかし、例外的なページを大量にCMSで管理すると、管理工数やコストがかさみ、運用効率の低下につながる可能性があります。
そのため、例外的なページを作成する際は、その数を最小限に抑えることをおすすめします。
ECサイト向けの機能を有するCMSには多くの種類があります。まずはCMSの特性を理解したうえで各製品の特性を把握し、自社に適したCMSを選択しましょう。競合の利用状況を参考にするのも有効です。
ユーザーがECサイトにたどり着いたきっかけや、購入前後の行動をなど、認知から購入後までのユーザー体験を推測すると、必要な要件を洗い出せます。
実店舗を保有している場合は、店舗の来店客とECサイトの利用者にの差はあるのか、もしくは全く異なる客層にアプローチすべきかを検討しましょう。また、来店客にECサイトへの来訪を促す施策を実施するなど、自身の購入体験も思い出しながら、ユーザーに受け入れられるECサイトの構築を目指しましょう。
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