「MQLって何?」
という疑問をお持ちの方へ、端的に回答からお伝えすると、Marketing Qualified Lead の略語であり、直訳すると、“マーケティング適格リード” です。
ほかのリード(見込み客)と比較して、顧客化する可能性が高いとマーケティング部門が判断したリードを、MQLといいます。
MQLの概念を正しく理解し、MQLを適切にマネジメントすることは、ターゲット顧客との関係を深めて営業成果につなげるために欠かせません。
この記事では、MQLの意味からその重要性、SQLとの違い、効果的な運用方法までわかりやすく解説します。自社のマーケティング戦略を、より効果的に構築するために、お役立てください。
まずは、MQLの基礎知識について、確認していきましょう。
冒頭でも触れたとおり、MQLは Marketing Qualified Lead(マーケティング クオリファイド リード)の略語です。
Qualified(クオリファイド)は、「資格のある、必要条件を備えた、有能な」といった意味です。よって、MQLは、“マーケティング活動において、有望だと認められたリード(見込み客)” となります。

具体的には、商品やサービスに対して関心を示し、購入や成約の可能性が比較的高いと見なされる見込み客のことです。
詳しくは後述しますが、MQLは、企業が実施するマーケティング活動(例:サイト訪問、メールマーケティング、イベント参加など)を通じて識別されます。
マーケティング活動を通じて得られる情報(例:サイト訪問頻度、メール開封、ダウンロードした資料など)に基づき、購入に至る可能性が高いかどうかを評価します。
MQLとセットで登場する用語に「SQL」があります。
SQLは、Sales Qualified Lead(セールス クオリファイド リード)の略で、直訳すれば「営業適格リード」となります。
この関係を理解するためには、MQLやSQLの語が使われている英語圏で、顧客醸成プロセスがどう捉えられているか、知っておきましょう。下図をご覧ください。

「潜在顧客 ⇒ リード ⇒ MQL ⇒ SQL ⇒ 商談 ⇒ 顧客化」の流れがあり、MQL・SQLはリード醸成プロセスであることがわかります。
SQLに対しては、営業担当者が電話やメールなどで営業活動をして、成約に向けたアプローチをしていきます。
上図の考え方では、マーケティング部門は「潜在顧客との接触〜リード創出」を担当します。
マーケティング部門は、営業部門に引き渡す準備が整ったリード(=MQL)を、営業部門にバトンタッチして、その先の営業活動を進めてもらいます。
営業部門は、受け取ったMQLのリストから、さらに成約見込みが上位の見込み客を「SQL」として見極め、効率的な営業活動を展開します。
なぜ、見込み客を「MQL」としてマークするのでしょうか。MQLを識別するメリットとして、大きく2つ挙げられます。
マーケティング部門は、さまざまなタッチポイント(顧客接点)を保有しています。
たとえば、自社サイトへのアクセス、オウンドメディアでのコンテンツ提供、SNSの投稿、広告などです。
これらの接点から得られる、エンゲージメントデータ(関わりの深さや頻度を示すデータ)は、ビジネス成功の鍵となります。
アクセス回数やサイト滞在時間、クリックした広告テキストなどから、見込み客の興味関心や購買意欲を推し量ることができるからです。
「リード創出 ⇒ MQL ⇒ SQL」のプロセスを踏むことは、マーケティング部門と営業部門の連携を強化するうえで、非常に効果的なアプローチです。
このプロセスを軽視すると、マーケティング部門と営業部門の間に溝ができ、組織的な不協和音を生むことになりかねません。これは、企業にとって明らかな機会損失です。
MQLのマークは、単なる見込み客の分類ではなく、組織全体で共通の目標に向かって歩むための、重要な一歩なのです。
Marketing Qualified Lead: Everything You Need to Know About MQLs(英語)
ここで一点、補足があります。
日本企業の場合、営業部門が新規開拓(リード創出)から担当する組織編成も、多く見られます。
その場合、マーケティング部門・営業部門という部門の区切りにはとらわれず、見込み客を醸成するプロセスとして、「潜在顧客 ⇒ リード ⇒ MQL ⇒ SQL ⇒ 商談 ⇒ 顧客化」を捉えてください。
場合によっては、MQLのフェーズをSQLのフェーズと統合し、より一層の効率化を図ることが望ましいかもしれません。
各企業の組織編成や営業スタイルは多種多様であり、それに合わせて最適なやり方を模索することが大切です。
続いて、MQLをどのように運用すればよいのか、実践面を見ていきましょう。
効果的にMQLを運用するための4つのステップとして、以下をご紹介します。
1つめのステップは「マーケティング部門と営業部門の関係強化」です。
マーケティング部門と営業部門が一体となって取り組むことが、MQLの運用に不可欠となります。
マーケティング部門の意見や考え方だけで、MQLの運用を進めてしまうと、営業現場との乖離が生じます。これは、営業成績を悪化させる原因となります。
営業担当者の心情の観点からも、不満感が大きくなりやすく、モチベーション低下を招くリスク要因です。
以下に具体的なポイントをリストアップしました。
【関係強化のための具体的な方法】
マーケティング部門と営業部門の垣根がなく、風通しのよい風土を醸成することを目指しましょう。
2つめのステップは「MQLの定義の策定」です。
マーケティング部門と営業部門が協調して動ける体制が整ったら、MQLの定義付けに取り組みます。
繰り返しになりますが、両部門の関係が未構築の段階で、マーケティング部門が独断でMQLを決めてしまうと失敗しやすいのでご注意ください。
ここでも、マーケティング部門と営業部門が協力して、ともに会議を開いて共有し、文書化する必要があります。
MQLを考えるうえで役立つ、根源的な問いを3つ、ご紹介します。
出典:Marketing Qualified Lead: Everything You Need to Know About MQLs(英語) より抄訳
*1:デモグラフィック(人口統計学的)とは、年齢や性別、職業などの個人の属性、ファームグラフィック(企業統計学的)とは、企業の業種や規模、所在地などの企業の属性を指します。
まずは上記の3つの問いについて、メンバー全員で議論し、具体的な定義へと落とし込んでいきましょう。
なお、MQLは組織全体として取り組む「バイヤーペルソナ(典型的・代表的な顧客像)」と照らし合わせながら、検討することが重要です。

バイヤーペルソナの作り方については、以下で詳細を公開しています。あわせてご覧ください。

3つめのステップは「MQL運用の開始」です。
次に進むべきはMQL運用の具体的な実践です。適切なリードを見極め、営業部門へと引き継ぐプロセスを開始します。
【MQL運用を始める主要ステップ】
MQLの運用で重要となるのは、どう実践するか、その作業面や仕組みづくりの準備です。
準備段階をおろそかにすると、担当者の労力が非効率に奪われて生産性が落ちたり、選定するMQLの精度に問題が生じたりします。
なお、効果的なMQL管理ツール選定に関する詳細は、この後で詳しく解説します。このまま読み進めてください。
4つめのステップは「MQLの定義の定期的な見直し」です。
ビジネスの成長や顧客層の拡大に伴い、リードの特性やバイヤーペルソナが変わることがあります。
この変化に柔軟に対応するためには、MQLの定義を定期的に見直し、アップデートすることが不可欠です。
見直しは、マーケティング部門と営業部門が協力して行います。目安として、四半期(3ヶ月)ごとにMQLの定義を評価し、必要に応じて調整を加えるのが理想的です。
この過程では、以下のポイントに注意してください。
【MQL定義見直しのポイント】
現状のままでよしとせず、常に先を見据えた最新アプローチを取ることが、マーケティングと営業の成功を確実にします。
先ほど、MQLを定義する根源的な問いとして、以下をご紹介しました。
出典:Marketing Qualified Lead: Everything You Need to Know About MQLs(英語) より抄訳
上記について定義しても、それらを計測できなければ、実用化できません。よって、上記を定義するためのツールを導入します。
ツールの分野としては、「マーケティングオートメーション(MA)」と呼ばれるツールを導入して、MQL管理に活用するのが一般的です。
以下で具体的に見ていきましょう。
まず全体像から把握しておきましょう。下図をご確認ください。

出典:CRMとは?基本の意味からツールの必要性・事例までわかりやすく解説
前出の「潜在顧客 ⇒ リード ⇒ MQL ⇒ SQL ⇒ 商談 ⇒ 顧客化」と、実質的な流れは同じです。
利用ツールの観点から見ると、MQLの醸成までを担うのが「MA」、SQLの醸成と顧客化を担うのが「SFA」、基盤として全体を担うのが「CRM」という関係性になっています。
|
略語(略す前の語) |
日本語訳 |
対象顧客 |
対象部署 |
|---|---|---|---|
|
MA |
マーケティングオートメーション |
おもに潜在顧客〜見込み客 |
マーケティング部門 |
|
SFA |
営業支援システム |
おもに見込み客〜新規顧客 |
営業部門 |
|
CRM |
顧客関係管理 |
潜在顧客〜プロモーター(推奨者)まですべての顧客 |
マーケティング部門 |
本記事の主題である「MQL」は、MAツールにて管理を行います。

MAツールは、さまざまなベンダー(提供元)から販売されており、選択肢が数多くあります。
MAツールによって、保有する機能や重点が異なりますので、MQL管理に適した機能を持つツールを選定することが大切です。
MQL管理に必要な機能は、以下のとおりです。
なかでも重要となるのが、「スコアリング機能」です。
特定の属性や業界、役職などのほか、「ホワイトペーパーダウンロード=3ポイント、ウェビナー参加=5ポイント」のように、見込み客の行動に基づいたスコアリングを構築できるツールを選定しましょう。
具体的に、どれがMQL管理できるMAツールなのかといえば、主要なものとして以下があります。
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ベンダー名 |
ツール名 |
特徴 |
|---|---|---|
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HubSpot |
総合的なマーケティングオートメーション機能をバランスよく提供します。使いやすいインターフェースと豊富なカスタマイズオプションがあり、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。 |
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Salesforce |
Marketing Cloud Account Engagement |
とくにBtoB企業向けに設計されたMAツールです。大企業に対応する高度なスコアリング、メールマーケティング、リードナーチャリング(見込み客の醸成)機能を備えています。 |
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Adobe |
とくに大規模なBtoB企業に適しています。複雑なキャンペーン管理、高度なセグメンテーション、AIによる予測分析機能を備えています。 |
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上記のほかにもMAツールは多数あります。自社に合うツールを探していきましょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。
自社のニーズに最適なMQL管理ツールを探していく際には、以下の7つの基準を参考にしてみてください。
最後に、これからMQL管理に取り組む方へ、留意したいポイントを3つ、お伝えします。
1つめのポイントは「MQL醸成を加速させる」です。
マーケティング部門の取り組みとしては、できる限り多くの見込み客をMQLの基準へと醸成し、営業部門へと引き継ぐことが重要目標となります。
【具体的な取り組みの例】
リードナーチャリングについて詳しくは、以下の記事で取り上げています。あわせてご覧ください。
2つめのポイントは「営業部門との連携を強化する」です。
本記事で繰り返しお伝えしてきたとおり、マーケティング部門と営業部門の協働は、重要な成功の鍵です。
また、MQLの基準の定期的な見直しや部門間での意見交換を通じて、必要であれば組織全体の方針を更新していくことも大切です。
これにより、全社的に一貫性のある戦略を展開し、部門間の相互理解と協力体制を構築できます。
3つめのポイントは「テクノロジーを活用する」です。
MQL管理の効率化には、最新のテクノロジーを積極的に取り入れることが欠かせません。
高度な分析やAI(人工知能)を活用したスコアリングなど、精度の高いMQL管理を、労力をかけずに実現できるようになってきています。
Excelのスプレッドシートで手作業を続けていては、限界があります。競合他社に後れを取らないためにも、必要なツールを導入し、体制を整備することが重要です。
たとえば、以下はHubSpotのMAツールで、リードスコアリング・フォローアップ・通知などを自動化している様子です。

このようなツールを活用することで、MQL管理のプロセスを大幅に効率化できます。テクノロジーの力を上手に使い、マーケティングと営業の生産性を高めましょう。
HubSpotは無料でも利用可能ですので、以下のページよりご確認ください。
本記事では「MQL」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
効果的なMQLの運用方法 4ステップとして以下をご紹介しました。
MQL管理ツールとして、一般的に使われるのは「MAツール」です。HubSpotのMAツールは「Marketing Hub」に含まれており、無料でご利用いただけます。
MQL管理において留意したいポイントは、次のとおりです。
MQLの効果的な運用で、組織全体の成果を底上げしていきましょう。
Marketing Hubは、HubSpotのCRMに集約された顧客情報を結び付ける統合型のマーケティング オートメーション ソフトウェアです。有益なコンテンツを提供して自社に興味を持ってもらい見込み客と接点を構築。さらに、マーケティング業務を自動化し、最適な方法とタイミングで見込み客や顧客にアプローチしましょう。
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