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顧客ロイヤルティとは?高める方法や測定に使う指標について解説

顧客ロイヤリティ_アイキャッチ

顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して持つ愛着や信頼度のことです。少子高齢化による人口減少や、商品・サービスの飽和などにより、新規顧客の創出は難易度が増しています。売上を安定させるには、既存顧客と長期にわたって良好な関係性を構築するためのアプローチが重要です。

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顧客ロイヤルティは、既存顧客との関係性を評価する指標として注目されています。本記事では、顧客ロイヤルティの基礎知識や顧客ロイヤルティを向上させるためのステップ、顧客ロイヤルティの高い企業の事例などを詳しく紹介します。

顧客ロイヤルティとは?

顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して持つ愛着や信頼度のことを指します。ロイヤルティが高い顧客は、ほかの選択肢があってもその企業やブランドを選び、積極的に周囲の人に勧める傾向があります。

企業側から先に顧客へ価値を提供し、満足度が高まると顧客ロイヤルティが向上します。その結果、競争の激しい市場環境でも収益が安定しやすくなるのがメリットです。
 

顧客ロイヤルティを構成する2つの要素

顧客ロイヤルティは、大きく次の2つに分けることができます。

  • 心理面ロイヤルティ:企業・ブランド・商品に対して抱く「愛着・親しみ・信用」などの感情
  • 行動面ロイヤルティ:企業の商品を繰り返し購入したり、他人に勧めたりする行動

顧客の購買行動は、心理面ロイヤルティと行動面ロイヤルティの程度によって、さらに4つのセグメントに分けられます。

顧客ロイヤルティを構成する2つの要素

【セグメントごとのアプローチ方法】

  1. 心理面ロイヤルティ(高) × 行動面ロイヤルティ(高) 顧客との接点を増やす、特別なオファーを提示する
  2. 心理面ロイヤルティ(高) × 行動面ロイヤルティ(低) 購買意欲を高めるため、セールや割引などの施策を行う
  3. 心理面ロイヤルティ(低) × 行動面ロイヤルティ(高) 競合と差異化をはかり、心理面ロイヤルティを高める
  4. 心理面ロイヤルティ(低) × 行動面ロイヤルティ(低) 行動面・心理面ロイヤルティの双方を高めるために、購買意欲が高まるキャンペーンの実施や企業理念に共感してもらうための施策を行う

顧客ロイヤルティを高めるには、顧客がどのセグメントにいるのかを把握する必要があります。そのうえで、セグメントごとに有効な対策を考えましょう。
 

顧客ロイヤルティと顧客満足度の違い

顧客ロイヤルティと似た概念に、顧客満足度(CS)があります。顧客ロイヤルティは、商品やブランドに対する「愛着」の度合を表す指標です。対して顧客満足度は、商品やブランドに対する「満足度」を表します。

顧客満足度を把握するには、アンケートやモニター、聞き込み調査などの方法があります。
 

顧客ロイヤルティが重要視される背景

ここでは、顧客ロイヤルティが重要視されるようになった背景を解説します。
 

競争の激化

現代は、独自性の高い商品やサービスを開発しても、他社がすぐに参入してきます。また、成熟した市場では、商品やサービスのスペックによる差異化が難しく、価格競争になることもあるでしょう。

顧客ロイヤルティの向上は、いわゆる「指名買い」につながるため、スペックや価格による競争の回避につながります。また、ライバルとなるブランドが登場しても、顧客が流れづらくなるというメリットも享受できます。
 

新規顧客創出のコスト増加

新規顧客の創出と平行して、既存顧客のロイヤルティを高める取り組みを行うことで、中長期的に収益が安定しやすくなります。

また、フレデリック・F・ライクヘルドが提唱する「1:5の法則」が示すように、新規顧客への販売は、既存顧客に販売した場合に比べて約5倍のコストがかかるとされています。「解約率を5%改善すれば利益は25%改善する」といわれることもあるように、既存顧客への取り組みを強化することは利益の向上にもつながります。

既存顧客に選ばれ続けるブランドになることで、新規顧客の創出にかかるコストを削減することが可能です。それによって、さらに収益が安定するでしょう。
 

顧客ロイヤルティを向上させるメリット

顧客ロイヤルティを向上させると、次のようなメリットがあります。

  • リピート率の向上
  • 解約率の低下
  • 口コミによる新規顧客の創出
  • 顧客単価の上昇
  • 新サービスの効果的なプロモーション

ひとつずつ見ていきましょう。
 

リピート率の向上

顧客ロイヤルティが高い顧客は、定期的に同じブランドの商品・サービスを購入する傾向があります。競合他社に乗り換えることが少ないため、ロイヤルティの高い顧客が多いブランドはリピート率が向上します。

リピート率を高めることで、企業の中長期的な売上を安定させることが可能です。
 

解約率の低下

アメリカン・エキスプレス・インターナショナルでは、 顧客ロイヤルティを改善した結果、顧客の解約数を従来の4分の1にすることに成功しました。解約率が低下すると一定の売上を維持できるだけでなく、新規顧客の創出にかかるコストも削減できます。さらに、将来的な売上を予測する精度が高まり、経営戦略を立てやすくなるというメリットもあります。
 

口コミによる新規顧客の創出

ロイヤルティが高い顧客は企業やブランドのファンであるため、積極的に友人や家族に購入を勧める傾向があります。また、SNS上で口コミが拡散されることで、さらなる顧客の創出も期待できるでしょう。

また、第三者による率直なレビューは、企業のアピール以上に他者の購買意欲を刺激します。顧客ロイヤルティを高めるための取り組みは、自然な形で良い口コミを増やすことにもつながります。
 

顧客単価の上昇

企業やブランドに対するロイヤルティが高い顧客は、「同じブランドのほかの商品やサービスも使ってみよう」と思うものです。その結果、顧客単価が向上します。

チューリッヒ保険のケーススタディ(英語)に、顧客ロイヤルティが高い顧客は、低い顧客よりも顧客単価が27%高いというデータがあります。

また、顧客ロイヤルティが高い顧客は、購入した商品やサービスの新モデルが出ると買い替える傾向もあるため、顧客単価のさらなる向上を目指すことが可能です。
 

新サービスの効果的なプロモーション

ブランドに信頼や愛着を持っている顧客は、そのブランドの新しい商品やサービスにも強い関心を持つでしょう。

ロイヤルティが高い顧客にモニターとして試作品を使ってもらうことで、効果的なプロモーションが実現します。新しい商品やサービスに対する率直な意見を聞く機会にもなるため、改善にも役立ちます。
 

顧客ロイヤルティをはかるうえで役立つ指標

ここでは、顧客ロイヤルティをはかる際の代表的な指標を紹介します。

  • ネットプロモータースコア(NPS®)
  • アップセル・クロスセル率
  • ライフタイムバリュー(LTV)
  • 継続利用年数
  • 解約率(チャーンレート)
     

ネットプロモータースコア(NPS®)

ネットプロモータースコア(NPS®)は、顧客ロイヤルティを測定するための指標のひとつです。顧客が企業やブランドをどのくらい推薦しているかを評価することが目的です。

具体的には、顧客に対するアンケートで「企業やブランドを家族や知人にどの程度おすすめするか?」という質問を行い、0~10のスコアで判定してもらいます。

そのスコアから顧客を3つのカテゴリーに分類します。

  • 推薦者: スコアが9~10の顧客。企業やブランドを積極的に推薦する。
  • 中立者: スコアが7~8の顧客。企業やブランドには満足しているが、積極的には推薦しない。
  • 批評者: スコアが0~6の顧客。ネガティブな口コミを拡散する可能性がある。

企業やブランドを推奨する人の割合から、批判的な人の割合を引くと、NPS®が導き出せます。

注:ネット・プロモーター、NPS、NPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。

NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合

 

アップセル・クロスセル率

アップセル・クロスセルの定義は、それぞれ次の通りです。

  • アップセル(Upsell): 顧客が元々購入を検討していた商品やサービスよりも上位のモデルを勧める。例えば、検討しているスマートフォンの上位モデルである最新機種を提案する。
  • クロスセル(Cross-sell): 顧客がすでに購入した商品やサービスに関連する別の商品やサービスを勧める。例えば、スマートフォンを購入した顧客に対して、保護フィルムやケースを提案する。

アップセル・クロスセル率とは、全顧客のうちアップセルやクロスセルが成功した顧客の割合を示します。

アップセル(クロスセル)率 = アップセル(クロスセル)に成功した顧客数 ÷ 全顧客数 × 100

例えば、10人との取引があり、そのうちの3人がアップセルやクロスセルに成功した場合、アップセル・クロスセル率は(3 ÷ 10) × 100 = 30%です。

 

ライフタイムバリュー(LTV)

「顧客生涯価値」を意味するLTVとは、ある顧客が特定の商品・サービスの利用を開始してから終了するまでにもたらす利益のことです。

LTVには計算方法がいくつかあるため、ここでは代表的なものを紹介します。

LTV =1顧客の平均購入単価 × 粗利率 ×1顧客の年間平均購入頻度× 1顧客の継続年数

LTVが高い顧客が多いほど、企業の中長期的な売上が安定します。サブスクリプションサービスなど、顧客の継続的な契約によって利益を得ている企業で特に重視されやすい指標です。商品やサービスのリピーターを増やすための施策の効果測定にも役立ちます。

 

継続利用年数

顧客がどのくらいの期間、商品・サービスを利用しているのかを表す「継続利用年数」も、顧客ロイヤルティの指標になります。

継続利用年数だけでなく、商品やサービスに対する満足度もアンケートの質問項目に加えることで、顧客ロイヤルティを的確に評価できるでしょう。
 

解約率(チャーンレート)

解約率は、顧客がサービスや契約を解約する割合を示す指標です。特定の期間内に解約したユーザー数を、その期間内に存在した総ユーザー数で割ることで求められます。

解約率 = 解約したユーザー数 ÷ 総ユーザー数 × 100

解約率を下げるための方法は、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

顧客ロイヤルティを高めるステップ

ここでは、顧客ロイヤルティを高める4つのステップを解説します。

  1. 顧客ロイヤルティの現状を分析する
  2. 顧客ロイヤルティ指標の改善目標を設定する
  3. 顧客セグメントごとに施策を立案し、実行する
  4. 結果を振り返り、改善する
     

1. 顧客ロイヤルティの現状を分析する

顧客ロイヤルティの向上は、現状を正しく把握するところから始まります。顧客ロイヤルティをはかる指標には、NPS®やライフタイムバリュー(LTV)などがあります。指標に合わせて必要なデータを収集しましょう。

商品・サービスの販売履歴や客層などの定量データに加えて、満足度や「その商品の何が気に入っているのか」といった定性データも収集するのがポイントです。

HubSpotが提供するカスタマー サービスの支援ツール「Service Hub」には、顧客アンケートツールが備わっています。アンケートのカスタマイズからチーム内での共有、結果の分析までを1つのプラットフォーム上で行うことが可能です。
 

2. 顧客ロイヤルティ指標の改善目標を設定する

分析結果をもとに、顧客ロイヤルティを向上させるための具体的な目標を設定します。目標は、NPS®の向上や解約率の低下など、顧客ロイヤルティをはかる指標に基づいて設定すると良いでしょう

例えば、「NPS(ネットプロモータースコア)を5ポイント向上させる」、「解約率を3%低減する」などの目標を、期限を決めて設定します。
 

3. 顧客セグメントごとに施策を立案し、実行する

顧客の属性や購買履歴などのセグメントごとに適した施策を検討します。このとき、顧客体験(CX)を向上させることを意識して施策を考えるのが大切なポイントです。一例として、特にロイヤルティが高い顧客に対してはVIP会員制度を導入し、特別なサービスや割引を提供するなどの方法があります。

パーソナライズされた顧客体験は特別感があり、顧客満足度を高める効果が期待できます。企業やブランドに対しても良い印象を抱いてもらいやすく、信頼関係も構築できるでしょう。
 

4. 結果を振り返り、改善する

一定の期間が経過したら、設定した指標を再度評価し、目標の達成度を確認しましょう。必要に応じて施策や戦略の再評価を行い、新たなアプローチを検討します。

顧客からのフィードバックを収集し、改善につなげることも重要です。顧客のニーズは変化していくため、常に施策をアップデートすることを心がけましょう
 

顧客ロイヤルティを向上させるポイント

ここでは、顧客ロイヤルティを高めるためのポイントを4つ紹介します。

  • 顧客体験の向上に努める
  • CRMに取り組む
  • 購入直後のサービスに力を入れる
  • ロイヤルティプログラムを実施する
     

顧客体験の向上に努める

使いやすいWebサイト・アプリの提供や親切なカスタマーサポートなどによる顧客体験の向上は、満足度に直結します。

商品やサービスを快適に使用できると、それだけでブランドに対して良い印象を持ってもらえるでしょう。顧客のフィードバックを積極的に収集し、商品やサービス改善に役立てることも顧客体験の向上につながります。
 

CRMに取り組む

顧客ロイヤルティを効率的に高めていくには、CRM(顧客関係管理)という考え方が重要になってきます。

CRMは、企業と顧客の間で良好な関係性を構築するという概念で、そのために必要な見込み客や顧客に関する情報を一元管理するツールのことをCRMツールと呼びます。属人化しやすい顧客情報を1か所に集約し、顧客と接点を持つ営業やマーケティング、カスタマーサポートなどの部門横断で共有します。それにより、顧客の状況に合った施策の立案やコミュニケーションが実現可能です。

CRMに取り組むことは、見込み客や顧客側にもメリットが数多くあります。担当者が変わっても常にCRM上で最新の顧客情報が共有されているため、状況を説明し直す手間が省けます。また、CRMに蓄積された情報をもとにマーケティング活動を行うことで、見込み客へのアプローチも最適化されるでしょう。見込み客が必要とするタイミングで適切な情報を受け取れるようになり、商品やサービスの購入を具体的に検討できます。

このように、CRMツールの情報をベースにして企業と顧客の関係を構築することは、満足度を効果的に高めることにつながり、顧客ロイヤルティが形成されます。

 

購入直後のサービスに力を入れる

顧客体験のなかでも、購入直後の対応は顧客ロイヤルティに大きな影響を与えます。購入後のサポートやアフターサービスを強化することで、顧客が商品やサービスを購入したあとも満足度を維持できるでしょう。

商品やサービスの利用方法やメンテナンス方法など、顧客が購入後に必要になると考えられる情報は、企業側から積極的に提供することを意識します。チャットで気軽に質問できるサポート窓口の設置も効果的です。
 

ロイヤルティプログラムを実施する

ロイヤルティプログラムとは、企業の商品・サービスを継続的に利用したくなるような施策のことです。

例えば、Amazonは迅速な配達サービスや会員限定のサービスを受けられるAmazon Primeを展開しています。Prime会員の支出額は非会員の2倍以上となっており、顧客単価が高いことがわかります。
 

高い顧客ロイヤルティを実現している企業事例

ここでは、高い顧客ロイヤルティを実現している企業の事例を2つ紹介します。
 

イオンリテール株式会社

イオンリテール株式会社

出典:イオンリテール株式会社

イオンリテール株式会社は、「イオンお買物アプリ」を提供し、チラシやクーポンの配布、店舗での買い物に連動したキャンペーンなどを通じて顧客ロイヤルティを向上させる取り組みを行っています。

特に、クーポン配信による効果が顕著で、菓子・飲料・嗜好品などの各売上が平均162%伸長しました。クーポンは毎週110万件以上の利用があり、無料クーポンキャンペーンには1企画あたり100万人ほどが応募しています。

また、同社は顧客データと店舗の購買データを紐づけ、「誰がどの店舗で何を購入したのか」というデータを収集しています。このデータを分析し、顧客が望む情報や商品を理解することで、より効果的なマーケティング戦略の策定が可能です。

アプリを通じて蓄積されたデータで顧客のセグメント化も行っており、パーソナライズされた情報の提供にもつながっています。
 

VFジャパン株式会社

VFジャパン株式会社

出典:VFジャパン株式会社

アパレルブランドのVANS(ヴァンズ)を展開するVFジャパン株式会社は、「VANS Family」と呼ばれるロイヤルティプログラムを立ち上げました。その結果、全体の半分以上がECからの売上となり、2年間で1,200万人超の会員を創出することに成功しました。

「VANS Family」にユーザーが登録すると、趣味やその熟練度、興味のあるもの、靴のサイズといった質問が投げかけられます。また、アンケートやイベントなどで収集した顧客に関するデータも、プロファイルの構築に活かしているといいます。

また、アーティストとのコラボスニーカーのプレゼントやスケートボードのトリック投稿でのポイント付与など、さまざまなイベントを行っています。顧客に楽しんでもらいながらブランドの世界観を伝える取り組みがユニークです。
 

顧客ロイヤルティを高めてマーケティングを成功させよう

顧客ロイヤルティを高めるには、顧客体験を総合的に見直し、満足度を高めることが重要です。

初めて自社の商品やサービスを購入してくれた顧客に対しては、マニュアルの提供や使用方法のレクチャーといったアフターサポートを充実させましょう。長年のリピーターには、VIP会員制度やシークレットセールへの招待などで、特別感を演出する施策を行うとロイヤルティがさらに高まります。

顧客のニーズに合わせて、施策をひとつずつ丁寧に実行することで、顧客との間に信頼関係が構築されます。顧客理解が足りていないと感じる場合は、直接的なヒアリングやカスタマージャーニーマップの作成などを通じてニーズを把握するところから始めてみましょう。

 

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