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企業を経営するうえでは、予算と実績とを関連付けた予実管理が重要です。しかし、「予実管理」という言葉は知っていても、実務は単純な「実績管理」のみに留まっているケースも少なくありません。適切な予算や目標計画を設定しないまま、過去の実績値だけを回収・報告する業務になっていないでしょうか。これでは着地見込みの精度は一向に上がらず、目標と実績の乖離原因を特定することも、利益をコントロールすることもできません。
本来の予実管理とは、計画に基づき、乖離を分析し、次なる対策を講じるためのプロセスです。

本記事では、単なる実績報告から脱却し、経営目標の達成に直結する「本来の予実管理」をどのように構築・運用すべきか、その基本手順と重要性を解説します。また、集計業務の自動化やAI活用による予測精度の向上など、本来集中すべき「判断と対策立案」を支えるための考え方もあわせてご紹介します。

予実管理とは、事前に設定した予算や売上目標と、現状の売上や経費などの実績を対比させて数値分析を行うことです。予算目標に対する進捗状況や課題を、マネージャーなどの管理者が判断するために用いられます。まずは、予実管理について理解を深めるために、概要や必要性、「予算管理」との違いを詳しく解説します。
予実管理は、経営者や予算を管理するすべての部門のマネージャーが、組織を正しい方向に導くために欠かせない指針です。
例えば、営業部門では、売上目標や最新の実績、架電数・訪問数・見積もり実施数といった営業メンバーの行動履歴などを記録します。このようなデータを蓄積しておくと、進捗が遅れている場合に、どのプロセスが問題になっているのかといったボトルネックの特定が可能です。
マーケティング部門では、認知拡大から見込み客の醸成、継続利用の促進に至るまで、さまざまな施策を実施します。施策ごとに割り当てた予算が適切だったかどうかを判断する際にも、予実管理が役立つでしょう。
費用対効果が低い施策を取りやめ、成果が上がる見込みのある施策に注力することで、予算配分の適正化が実現できます。
予実管理の最大の目的は、予算と実績の乖離を早期に発見し、迅速な軌道修正を行うことです。単に数値を比較して終わりにするのではなく、乖離の原因を突き止めて具体的な対策を講じることで、経営目標の達成確度を高めます。
また、予実管理を通じて組織内の各プロセスを可視化することで、リソースの最適化を図ることも重要な目的です。どの施策が費用対効果が高いか、あるいはどの営業プロセスにボトルネックがあるかを明らかにすることで、限られたリソースを成果につながりやすい領域へ集中させることが可能になります。
予実管理と似た概念に、「予算管理」があります。予算管理は予算計画そのものに焦点を当てているのに対して、予実管理は予算と実績を比較する点が異なります。
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項目 |
予算管理 |
予実管理 |
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主な役割 |
予算計画そのもの (「何を目指すか」) |
予算と実績の比較・分析 (「現状はどうなっているか」) |
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主な目的 |
経営目標に沿った予算の策定と配分 |
乖離の早期発見と迅速な軌道修正(PDCAの実行) |
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主な活動 |
目標数値の算出、計画の策定・承認 |
数値の集計、進捗把握、乖離原因の分析、対策立案 |
ここでは、予実管理の主な手法を具体的に紹介します。
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手法 |
適したケース |
主な注意点 |
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Excel・Googleスプレッドシート |
小規模な組織で、コストを抑えて予実管理を始めたい場合 |
規模拡大やファイル分散により、更新・集計・権限管理が煩雑になりやすい |
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CRM・SFA |
営業活動や案件進捗を可視化し、売上予測・目標達成管理を行いたい場合 |
財務会計を含む全社・拠点横断の予算管理には、専用システムとの連携・併用が必要 |
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予実管理システム・予算管理システム |
部門・拠点を横断した会計管理の適正化により、経営状況を的確に把握したい場合 |
営業担当者の活動内容や商談ごとのボトルネック分析には、CRM・SFAとの連携が必要 |

予実管理は、スケジュール管理やデータベース作成に活用されるExcelやGoogleスプレッドシートで実施可能です。
活用する際は、次の3つの項目を設定しましょう。
ExcelやGoogleスプレッドシートを活用した予実管理は、コストを抑えて始められるのが大きなメリットです。また、グラフや図表の作成機能がデータの直感的な理解に役立ちます。
ただし、複数人が同時に更新する運用では管理が煩雑になりやすいため、クラウド上でファイルを共有・管理できる環境をあわせて整えるのがおすすめです。
なお、組織の規模が大きくなると、シートやセルの数が増え、管理が煩雑になります。特にExcelで管理する場合は、各担当者からの数値回収と集計に時間がかかり、リアルタイムでの状況把握が難しくなる点が課題です。
円滑に運用できるよう、定期的にシートやセルの見直しを行い、管理しやすくなる工夫をしましょう。

CRM(顧客関係管理)とは、顧客に関する情報を一元管理できるツールのことです。また、SFA(営業支援システム)は、営業活動に特化した情報管理ツールです。
CRMやSFAの特徴は、営業担当者が入力した商談・案件情報をもとに、営業部門の予算の達成状況をリアルタイムで把握できる点です。そのため、 定期的なミーティングを待たずに必要な情報を適宜確認できます。営業担当者が日々の商談情報を入力すれば、その内容が自動的に集計・可視化されるため、Excelを運用する場合のような数値を回収する手間は発生しません。
また、SFAで予算や実績を管理すれば、データをもとにした売上予測も可能です。現状のデータや状況に応じた最適な対策の検討に役立ち、営業部門の目標をより効率的に達成できるようになります。
近年は、CRM・SFAにAI機能を搭載した製品も増えました。蓄積された商談データをもとにした売上予測の自動算出や、予算と実績の乖離が生じている部門・商品の自動検知など、従来は人が集計・分析していた工程をAIが担えるようになりつつあります。
HubSpotが提供するSFA「Sales Hub」でも、AIによる売上の予測機能が利用可能です。ほかにも営業活動を効率化・最適化し、顧客体験を向上させるための機能が充実しています。
予実管理システムや予算管理システムは、予算の編成から予実管理、収集したデータの分析、実績分析などの予算管理プロセス全体を効率化できるツールです。
ユーザーごとに権限を設定し、部門や拠点を越えた情報の管理ができるだけでなく、予算や売上に関する帳票・資料を自動で作成する機能もあります。
また、AI機能を搭載した製品も登場しており、過去の実績データをもとにした予算案の作成支援や、予算と実績の乖離が大きい項目の自動検知などに活用できます。
予実管理システムや予算管理システムは、会計管理を適正化し、自社の経営状況を的確に把握することを目的としたものです。営業活動の効率化や顧客体験の向上といった目的で予実管理を行う場合は、CRMやSFAを検討すると良いでしょう。
予実管理の基本手順は、1. 予算目標を立てる、2. 具体的な数値目標を設定する、3. 数値をチェックする、4. 対策を考えるという4ステップで構成されます。
予実管理は、予算と実績を比較して目標達成を目指すための管理会計業務です。そのため、まずは予算目標を立てることが重要となります。
目標設定には、努力次第で達成可能な水準を示し、組織全体の方向性を統一するという重要な役割があります。
予算目標を立てたら、具体的な数値目標を設定します。
すでに事業を展開している場合は、過去の実績をベースに予算を立てます。ただし、そのまま用いるのではなく、将来的に予想される売上や仕入れ、費用の増加、設備投資の見込みを考慮することが必要です。
これから事業を展開する場合は、見込み額を予想して目標を設定しましょう。
なお、AI搭載のCRM・SFAを導入している場合は、過去の実績データをもとにAIが算出した予測値を目標設定の参考として活用しても良いでしょう。
予算と実績は、月次での確認が重要です。
年次で予算を立てている場合でも、月単位で分割し、なるべくこまめに振り返りましょう。予算と実績の差分をできるだけ早く発見できれば、早期に対策して損失の拡大を抑えられます。
また、短期間で頻繁に進捗を確認すれば、より詳細な分析が可能となります。
なお、分析する際は、売上高だけでなく、販管費(販売費及び一般管理費)を差し引いた営業利益にも着目して乖離をチェックすることが重要です。広告宣伝費や人件費などを合わせた販管費が高くなると、利益が減ってしまうためです。
予算と実績に乖離がある場合は、戦略を再考しましょう。
例えば、予算をかけて販路を拡大したものの売上高が想定通りに伸びなかった場合、原因を究明し詳しく分析します。同時に、売上が好調な商品についてはプロモーションを強化するなどの施策で、さらなる売上拡大を目指します。
顧客のニーズに合ったアップセルやクロスセルの提案で、売上を増やす方法も有効です。
予実管理を実施する際のポイントは、次の通りです。
タイムリーな予実管理を実現するためには、担当者の努力ではなく、最新の数値が自動的に集まる仕組みづくりが必要です。
仕組みを整える際は、次の3点をルールとして定めておきましょう。
これらを明文化すると、担当者ごとの入力のばらつきがなくなり、月末の数値回収を待たずに現状を把握できます。結果として、月次だけでなく週次単位でも予算と実績の差分を追える体制が整います。
予実管理の精度を高めるには、現場からのリアルタイムの情報収集が不可欠です。データの入力や管理に手間がかかると現場の負担が増えるため、デジタルツールを活用して効率的にデータを入力できる環境を整えましょう。
ツールを選ぶ際は、自社の課題解決につながるものを選ぶことが大切です。必要以上の機能が搭載されていると操作が複雑になり、使いこなせるようになるまでに時間がかかります。ツールを導入・維持するためのコストも高くなるでしょう。
また、CRM・SFAや予算管理システムなど、AI機能を搭載したツールを検討する場合も、判断基準は同じです。「AIが搭載されているか」ではなく「自社の課題(予測精度、集計工数、入力負荷など)にどのような効果が期待できるか」という観点から選定することが重要です。
なお、AIの予測精度は入力されるデータの量と質に大きく依存します。商談情報が入力されていない、更新が滞っている、表記が統一されていないといった状態では、予測精度が低下するため、現場が無理なくデータを入力・更新できる環境を整えましょう。
予実管理で自社の課題が把握できたら、さらに課題を深掘りして原因を追究しましょう。
例えば、ある商品の売上が伸び悩んでいるケースでは、次のようにいくつかの要因が考えられます。
広告チャネルがターゲットにあっていない場合は、マーケティング戦略の見直しが必要です。また、商品を取り扱っている店舗が少ない場合は、販売チャネルの拡大が必要になるでしょう。そもそも現場の販売スタッフの接客スキルが足りないために、売上が伸び悩んでいる可能性もあります。
このように、予実管理によって得られたヒントから仮説を立案すると、ボトルネックを発見しやすくなります。
AIによる分析は仮説を立てる材料を迅速に提示しますが、それらを深掘りして、どの仮説を採用してどの施策を実施するか最終的に判断するのは人の役割です。
予実管理で成果を上げるには、次のようにPDCAサイクルを回して、改善を続けることが必要です。
PDCAサイクルで特に重要なのは、次のサイクルにつながる評価(Check)と改善(Act)のプロセスです。フィードバックの仕組みは整っているか、原因を究明できる報告プロセスは確立されているかどうかも確認しましょう。
予実管理は、目標達成や予算管理、費用対効果の確認に欠かせない取り組みです。
CRMやSFA、予実管理システムといったデジタルツールを活用することで、リアルタイムの情報をもとにした集計・可視化が可能になります。さらにAI機能を活用すれば、売上予測の自動化や予実乖離の早期検知により、管理者が判断と対策立案に集中しやすい環境を整えられます。
HubSpotのSales Hubには、AIによる売上予測機能が搭載されており、蓄積された商談データをもとに着地見込みを自動で算出できる設計になっています。
予算と実績は月次でのチェックが基本です。差分の発見が遅れると、対策が間に合わず損失が拡大する可能性があるためです。年次で予算を立てている場合でも、月単位に分割して振り返り、可能であれば1週間ごとにデータを更新して週次・月次の分析を行いましょう。
CRM・SFAと予実管理システムのどちらを選ぶべきかは、管理したい対象と目的に応じて使い分けます。営業部門の売上目標、案件金額、商談の進捗、受注見込みなどを管理し、営業活動のボトルネック改善や顧客との関係構築を目的とする場合はCRM・SFAが適しています。一方、部門や拠点を越えた会計管理の適正化や、経営状況の的確な把握を主目的とする場合は、予実管理システム・予算管理システムが適しています。
AI機能は十分に活用できます。ツールにもよりますが、具体的には、蓄積データをもとにした売上予測の自動算出、予実乖離の自動検知、商談の受注確度スコアリング、レポートの自動生成、データ入力の自動化などが可能です。従来は、人が集計して分析していた工程をAIが担うことで、管理者は判断と対策立案に集中できるようになります。
AIによる売上予測の精度を高めるには、商談情報の漏れのない入力、データの定期更新、表記統一が重要です。AIの予測精度は入力データの量と質に依存するためです。現場の入力負荷を下げる仕組みの構築は、結果としてAIの精度向上につながります。
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