この事例の要約
- 複数の事業部と国内外の拠点にまたがり、100種を超える多様な営業パターンを持つ広範な組織で、Excel中心の管理・情報の属人化・集計工数の増大という課題を解消するため、HubSpot Sales Hubを中核とした営業基盤の再構築に着手した
- 全社一斉展開ではなく、定着実績の見込める初期展開対象として3事業部・約200名からスタートし、経営層・管理職・現場それぞれが「見たい情報」を会議体ベースで先に定義した上で、既存の販売管理システムやDWH(データウェアハウス)・BI(ビジネス・インテリジェンス)と連携する現実的な設計を選択した
- 初期展開対象約200名の範囲で、年間48,000時間規模の業務工数削減効果が見られた。情報鮮度は「最大1か月前」から「前日」まで改善された
- 「100点を目指さず、まず60点で進める」という方針が組織全体への定着を支え、現場担当者が自らPDCAを回せる営業組織への変革を後押しした

(本プロジェクトを推進された皆様。左から、株式会社プロテリアル 情報システム本部 運用開発部 全社システム開発グループの松浦 大智氏、同グループ 主任技師の太田 陽平氏、営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャーの小島 洋介氏、同部 アカウント戦略グループ Deputy Project Managerの野本 啓輔氏)
企業概要
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項目 |
内容 |
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会社名 |
株式会社プロテリアル(Proterial, Ltd.) |
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業種 |
製造業(高機能材料) |
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事業内容 |
特殊鋼、ロール、磁性材料、パワーエレクトロニクス材料、電子材、電線、自動車部品の製造と販売 |
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社員数 |
単体 5,101名 / グループ連結 16,456名(2026年3月末現在) |
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本社 |
東京 |
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導入製品 |
HubSpot Sales Hub |
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導入対象 |
3事業部・約200名(以降段階導入) |
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推進体制 |
営業本部・情報システム本部による全社横断体制 |
導入前の課題
プロテリアルは、特殊鋼や磁性材料などの高機能素材をグローバルに提供する総合素材メーカーです。海外売上比率が過半数を占め、複数の事業部と世界各地の拠点に広がる広範な営業体制を持っています。
製造業では、顧客の製品設計に素材・部品が採用された時点で、数年先までの受注見込みが生まれます。同社も例外ではなく、一度採用されると長い営業サイクルが続く案件が多いため、案件の状況が需要予測・生産計画・投資判断と直結し、営業情報の精度と鮮度が経営判断の質を左右する重要な要素でした。
しかし、同社の営業情報管理にはいくつかの構造的な課題が積み重なっていました。
課題1:Excel中心の運用に伴う情報管理の限界
受注予測の判断には、中期計画・年度予算・見通し・実績の4軸をもとに情報を分析する必要があります。しかし、これらの情報は各事業部・各拠点の担当者が個別に管理するExcelファイルに分散しており、常に最新の状態を把握しにくい状況でした。そのため、経営判断のタイミングでも、参照できる情報が最大1か月前の状態にとどまり、現在の実態を正確に捉えることが難しくなっていました。

課題2:属人化・多重入力・集計工数の肥大化
分散したデータを突き合わせるには、同じ情報を複数のExcelやシステムへ入力する必要があり、集計作業の多くは担当者の手作業に依存していました。加えて、100種を超える多様な営業パターンが存在することで、情報管理はさらに複雑化。管理方法も担当者ごとに異なり、業務の属人化を招く要因となっていました。
担当者が異動・退職する際には、こうした個別運用の引き継ぎにも多くの時間を要するため、組織全体にとって大きな負担となっていたのです。
課題3:分散したシステムをつなぐ難しさ
販売管理、見積、コードマスタ、予算管理など、営業プロセスに関わるデータは複数のシステムに分散していました。解決策を求めて外部ベンダーへ相談したこともありましたが、複数の国・複数の事業部にまたがる1万社以上×数千品目規模のデータの複雑さから、要件整理は困難を極め、運用設計でも関係者間の合意形成に至らず、プロジェクトは実現しませんでした。
同社に必要だったのは、既製品の導入でも大規模な刷新でもなく、現場の実態に合った設計を一緒に考えてくれるパートナーだったのです。
サービス選定の決め手:現場の自走を支える操作性と、将来のMA連携
HubSpot Sales Hubとは
HubSpot Sales Hubは、HubSpot Smart CRM™を基盤とした営業支援ソフトウェアです。案件管理・パイプライン管理・活動履歴の一元化に加え、外部システムとの連携拡張性が高く、既存の販売管理システムやDWH/BIツールと組み合わせた柔軟な設計が可能です。
同社が評価した3つのポイント
1. 既存システムを活かした現実的な設計が可能であること
全社の販売管理システムを置き換えるのではなく、HubSpotをデータの中核に据えながら既存のデータベースやDWH/BIと連携する設計が実現できます。段階的な移行と既存資産の活用を両立できる柔軟性が、選定の大きな根拠となりました。
2. 「見たい情報」から逆算して設計できたこと
経営層・事業部管理職・現場担当者、それぞれの視点で必要なアウトプットをHubSpot上に集約できる。この設計の自由度が、業務要件からシステムを組み立てる進め方を可能にしました。
営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャーの小島氏は、三層それぞれに対し、週次・月次・四半期でそれぞれ何を確認したいかをヒアリングし、そのアウトプットからデータ構造の設計に落とし込んでいきました。ツールの機能に業務を合わせるのではなく、業務要件からシステム設計を組み立てられたことが、のちの定着の前提となりました。

(プロジェクトを主導した営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャーの小島洋介氏)
3. 現場の入力習慣を前提にできたこと
現場担当者が日々の業務の中で無理なく入力を継続できるよう、従来の作業感覚を大きく損なわない運用設計を前提に導入を進めました。
HubSpotを選んだ背景には、将来的な活用拡大への期待もありました。当時の競合候補と比較する中で、小島氏が重視したのは「営業管理だけでなく、将来的にマーケティングオートメーションまでシームレスに使えること」でした。また、エンジニアではなく営業企画の担当者が自らレポートを作成・分析できる直感的な操作性も、現場での自立運用を目指す同社にとって重要な選定基準だったと言います。
導入プロセス:「60点で進める」スモールスタートと合意形成
同社が選んだのは、変革意欲の高い3事業部・約200名からのスモールスタートでした。大規模組織の営業DXは、機能の優劣よりも「現場が使い続けられるか」が成否を分けると考えたためです。
プロジェクトは営業本部長をオーナーに、営業本部と情報システム本部の全社横断体制で推進されました。月次で経営層に進捗を共有しながら、現場との合意形成を重ねていきました。小島氏がプロジェクト全体を通じて一貫して重視したのは、「誰が・何を・なぜ見たいのか」を先に定義することでした。具体的には以下の7つのステップで進められています。
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ステップ |
内容 |
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1. 経営層のアウトプットを定義 |
経営会議で何が必要かを起点に、設計全体を組み立てる |
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2. 現状のシステム・データを整理 |
DB仕様やコード体系を正確に把握する |
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3. あるべき姿を設計 |
現実的なSTEP1として、HubSpot内外の構成を整理する |
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4. 現場をヒアリング |
「どう入力しているか」「本当は何を見たいか」を複数回聞き取る |
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5. 入力方法を定義 |
現場が継続できる運用設計を、現場と一緒にすり合わせる |
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6. 権限を設計 |
グローバル組織に対応した閲覧・編集権限を整理する |
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7. スモールスタート |
成功確率の高い事業部から先行リリースし、短期間で成果を出す |
中でも4・5は、定着を左右する核心でした。現場担当者が日々の入力作業に「自分に何のメリットがあるのか」と感じるのは、どの組織でも起こりうることです。小島氏は現場が何を見たいかを丁寧にヒアリングした上で、日々の入力が従来の手順から大きく変わらないよう、UIの設計を工夫しました。
現場への働きかけと並行して、経営層に対しては「100点を目指さず、まず60点で進める」という方針を粘り強く伝え続けました。60点でも、今まで見えなかったものが見えるようになる。残りの40点はユーザーと一緒に作り上げていく。こうして現場と経営の双方の合意を同時に形成していったことが、スムーズな定着につながりました。
運用開始後、同社のプロジェクトはさらに継続的な改善フェーズへと発展し、その取り組みは現在も続いています。営業本部の野本 啓輔氏と情報システム本部の太田 陽平氏、松浦 大智氏らが各事業部の会議体やユーザーとの対話に継続的に参加し、実運用の中で見えてきた課題や要望をもとに、レポートやダッシュボードの改善、運用ルールの見直しを重ねてきました。
+2点、+3点とさらなる改善を積み重ねる考え方のもと、現場の実態に合わせた改善を迅速に進めることができました。HubSpotのカスタマーサクセス担当者や認定パートナー企業とも定例会で相談しながら、継続的に進化させていくことで、事業部の営業基盤として活用が広がっています。
― 営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャー 小島 洋介氏
HubSpot Sales Hubの活用方法
同社は、HubSpotを単独のSFAとしてではなく、既存の販売管理システム・DWH・BIと連携させた統合的な営業情報基盤として位置付けています。つまりHubSpotが担う役割は、分散していた案件情報・活動情報・予実情報の「中核」です。
データ構造の設計と接続
販売管理システムからの受注データ、見積システムからの商談情報、予算管理ツールの計画値をDWH/DBを介してHubSpotに連携しています。営業担当者が一画面で中期計画・年度予算・見通し・実績を確認できる環境が整いました。
現場の入力負荷を下げる運用設計
現場担当者の入力負荷を最小化するため、普段の作業感覚を損なわない入力画面を整備しました。入力データが自動的に集計・可視化される仕組みが、定着率の向上に寄与しています。
会議体ごとのレポート設計
経営層が四半期単位で見る予実比較、事業部管理職が月次で確認する案件進捗、現場担当者が週次で管理する活動ログと次のアクション。この3層にレポートを整理したことで、各会議体で必要な情報をリアルタイムに参照できる体制が整いました。
導入による成果
定量的成果
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指標 |
導入前 |
導入後 |
|---|---|---|
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情報鮮度 |
最大1か月前 |
前日更新レベルまで改善 |
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業務工数削減 |
— |
初期展開対象約200名の範囲で年間48,000時間規模の削減 |
初期展開対象約200名の範囲で、年間48,000時間規模の業務工数削減効果が見られました。複数Excelへの多重入力・手動集計・報告資料の作成といった作業が自動化・一元化されたことによる効果です。
情報鮮度が「最大1か月前」から「前日」へと改善したことで、経営層が意思決定に必要なデータをほぼリアルタイムで参照できるようになりました。
HubSpotによって、グローバルで統一された最新の営業データをリアルタイムに把握できるようになりました。その結果、経営層は過去実績の確認だけでなく、将来の成長に向けた戦略やアクションについて、より深く議論できるようになっています。
― 営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャー 小島 洋介氏
定性的成果:業務の変化
HubSpotを中核とした情報基盤の整備により、組織の働き方にも具体的な変化が生まれました。
経営・管理・現場の「情報断絶」が解消
事業部ごとに分散していたExcel情報が集約され、経営層・管理職・現場が同じデータを参照しながら議論できる環境が生まれました。以前は各部門への問い合わせと手作業の集計が必要だった経営層の情報取得が、大幅にスムーズになっています。
現場担当者の主体的な業務管理が実現
入力負荷の低減と可視化環境の整備により、現場担当者が自身の案件・活動状況をリアルタイムで確認しながら、次のアクションを自己判断できるようになりました。報告のための集計作業が減り、本来の営業活動に充てられる時間が増えたと同社では評価しています。
属人化の解消と引き継ぎコストの低減
案件情報・活動履歴・顧客情報がHubSpotに集約されたことで、担当者の異動・退職時の引き継ぎコストが大幅に改善されました。「その人しか知らない情報」をシステム上に記録する文化が、組織に定着しつつあります。

今後の展望
初期展開で得た成果と知見を土台に、同社はさらなる活用拡大へと歩みを進めています。
今後はMarketing HubをはじめとするHubSpotの機能も積極的に活用し、マーケティングと営業の連携を一層強化することで、持続的な事業成長の実現を目指していきます。
― 営業本部 営業企画部 部長/プロジェクトマネージャー 小島洋介氏
製造業の複雑な営業組織の「見える化」を、一緒に考えませんか
複数の事業部や拠点にまたがる営業組織では、情報の分散や属人化が経営判断の精度を大きく左右します。プロテリアルの事例が示すように、成否を分けるのはツールの選定だけではありません。現場・管理職・経営層それぞれの「見たい情報」を丁寧に整理し、現実に即した設計を積み上げることが、定着への近道です。
御社の営業情報管理がどう変わりうるか。まず15分のデモでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
- Q. なぜ全社一斉ではなくスモールスタートを選んだのか?
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現場への定着を最優先とした判断から、段階的な展開を選択しました。 大規模組織における営業DXは、機能の優劣よりも「現場が使い続けられるか」が成否を分けるという考えが背景にあります。
- Q. 既存システムの移行・刷新は必要だったのか?
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既存システムの刷新は行わず、HubSpotとDWH/BIを介して連携させました。 全システムを置き換えるのではなく、HubSpotをデータの中核に据えながら既存資産を活かす構成が、組織の現実に即した進め方として採用されています。
- Q. 定量的な成果はどのくらいか?
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初期展開対象約200名の範囲で、年間48,000時間規模の業務工数削減効果が見られました。 あわせて情報鮮度が「最大1か月前」から「前日」へと改善し、経営意思決定に必要な情報をほぼリアルタイムで参照できるようになりました。
- Q. 現場への定着のために何が効果的だったか?
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「100点を目指さず、まず60点で進める」という方針を現場・経営層の双方と粘り強く共有しながら、現場が無理なく入力を続けられる設計を整えたことが定着を支えました。
- Q. 導入を進めたいが、最適な設計や実装リソースに不安がある場合はどうすればよいか?
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HubSpotの認定パートナーによる実装支援を受けることができます。 今回のプロテリアルの事例でも、現場が使い慣れた操作感で入力できるようにするための要件を実装面で補完する役割をHubSpotの認定パートナーが担い、現場定着に向けたUI設計・運用設計を支援しました。パートナー選定については、こちらよりご確認いただけます。
- Q. どのような企業の参考になる事例か?
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複数の事業部・拠点をまたぐ大規模な営業組織で、情報の分散・属人化・集計工数の多さに課題を感じているBtoB製造業の企業に参考になる事例です。 特に「全社一斉展開は難しいが段階的に進めたい」「既存システムを活かしながらCRMを整備したい」というニーズを持つ企業にとって、具体的な進め方の参考になります。
本事例は、2025年12月時点の導入・活用状況をもとに作成しています。記事中の削減効果値は、ヒアリング内容をもとにHubSpot Japanが試算したものです。