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カスタマーサクセスとは、顧客の成功を支援するために積極的な働きかけをする取り組みです。サブスクリプション型サービスやSaaS型ビジネスを展開する企業では、顧客の成功が自社の売上増加や経営安定につながるため、特に重要な取り組みだといえます。
実際に自社で必要な施策かどうかを確認するには、事例を参考にするのがおすすめです。
本記事では、カスタマーサクセスの事例をBtoB・BtoCに分けてご紹介します。事例から読み解く運用時のポイントもあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
BtoB向けのサービスは複雑かつ高度な機能を備えているケースが多く、導入後に顧客がすぐに使いこなせるとは限りません。そのため、顧客がサービスの価値を実感できるよう、あらかじめカスタマーサクセスプランを検討する必要があります。
本章でご紹介する5つの事例を参考に、適切なプランを構築しましょう。
クリエイティブツールやデジタルマーケティングツールを提供しているAdobe(アドビ)は、社内にカスタマーサクセス本部を設置して顧客の支援を行っています。その取り組みのひとつが、「プレミアサポート」と呼ばれるテクニカルサポートです。
プレミアサポートでは、顧客がAdobe製品を導入してから安定した運用体制を構築するまでの支援を実施しています。具体的な取り組みとしては、ツールを効果的に活用するためのKPI策定のアドバイスや、実際にAdobe製品を導入した他社の成功事例の紹介などがあります。
さらにプレミアサポートのなかで「Ultimate」という上位プランに加入すると、専任のテクニカルアカウントマネージャーによるサポートが受けられます。ロードマップのレビューや製品アップグレード・移行時のケアなど、顧客ごとにパーソナライズされた提案が特徴です。
参考:お客様に寄り添う。アドビがめざすカスタマーサクセス。|Adobe Blog
Adobeの主要な製品や特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
マーケティングオートメーションツール「SATORI」を提供するSATORIでは、導入直後のオンボーディングを重視したハイタッチなカスタマーサクセスを実施しています。
SATORIでは、「最初の半年でツールが通常業務に入り込んでいなければ、継続利用は難しい」という仮説のもと、導入初期の支援に注力しました。当初は顧客数がまだ多くなかったこともあり、担当者が直接顧客先を訪問したり、導入直後に活用してほしい資料を送付したりと、個別対応を中心に支援を行っていました。
また、有償サポートのニーズにも対応し、顧客との対話を通じて、どのような支援が必要なのかを蓄積していった点も特徴です。その結果、「なるべくコストをかけずに、でもなるべくハイタッチに支援する」ことが、オンボーディングにおいて重要だと判断しました。
現在は、契約直後から導入プロセス完了までを二人三脚で支援する「オンボーディングチーム」を設置しているほか、セミナーやユーザー会、活用コンテンツを提供する「コンテンツ&コミュニティチーム」、アップセルや活用提案を担う「コンサルティングチーム」など、役割ごとに組織を分けてカスタマーサクセスを推進しています。
特にオンボーディングチームやコンサルティングチームは、1対1で顧客と向き合うハイタッチな支援を重視しており、顧客ごとの状況や課題に合わせて伴走型のサポートを行っています。
参考:SATORI導入企業インタビュー|coorum CXin
オンラインストレージサービスを提供するDropbox Japan(ドロップボックス)は、顧客の声を徹底的に活用してカスタマーサクセスや商品開発の改善につなげています。
顧客の声を収集する際は、アンケートやミーティングで直接ヒアリングをするほか、社内のデータサイエンティストチームが、Dropboxの利用状況をもとに統計分析を行います。収集した顧客データは、青信号・黄信号・赤信号として可視化し、緊急度の高い顧客から順に利用率改善のアクションに結び付けています。
Dropboxは2017年頃から、コメントを用いた修正提案やファイル上でのディスカッションなどの機能が追加され、オンラインストレージからコラボレーションツールへと進化しました。Dropboxの新たな価値を顧客に実感してもらうため、カスタマーサクセス部門では、簡易マニュアルやFAQ、オンライントレーニングなどを通じて徹底した顧客サポートを行っています。
参考:Dropboxのカスタマーサクセス事例――オンラインストレージからコラボレーションツールへと進化するために掲げるKPIとは?|ITreview
SmartHRが提供している人事労務システム「SmartHR」は、99.5%という高い継続率を誇ります。高水準の継続率を維持し続けている理由は、約10年にわたり試行錯誤を繰り返してきたカスタマーサクセスの取り組みにあります。
参考:継続率99.5%を誇るSmartHRのカスタマーサクセスチームが、顧客のために"あえてやらない"こと|MarkeZine
参考:SmartHR カスタマーサクセス 2025(グロースマーケット事業本部)|稲船 祐介
クラウド会計ソフトを提供しているfreee(フリー)は、顧客企業の従業員数に応じて中規模企業、中小企業、個人事業主用と3つの事業部に分け、それぞれ10人ほどのカスタマーサクセス担当を配置しています。そのなかでも中小企業事業部は、各KPIの相関性を分析したうえで適切なアプローチを実施しているのが特徴です。
カスタマーサクセスには、解約率やARR(年間経常収益)、NPS®、ヘルススコア(顧客の健康度をはかる指標)といった代表的なKPIが存在します。中小企業事業部では、KPIのなかでも特に、解約率とヘルススコア、年間経常収益とヘルススコアに強い相関があると考え、一方の数値の変化に合わせて具体的なアクションプランを策定しました。
例えば、サービスの利用状況から顧客のヘルススコアが著しく低いことがわかった場合、問題を放置しておくと解約率の低下や年間経常収益の減少につながってしまいます。そこで、ヘルススコアが低下した段階で顧客のアポイントをとり、計3~4回のオンボーディング講習を実施しました。KPIを効果的に活用した好事例だといえるでしょう。
参考:経理に携わる全ての人たちを、経営の"主役"に――freeeが挑む、もう1つのカスタマーサクセス|ITreview
カスタマーサクセスといえば、サブスクリプション型のビジネスやBtoB企業が活用するイメージが強いのではないでしょうか。しかし最近では、スターバックスジャパンや花王をはじめとするBtoC企業もカスタマーサクセスのための取り組みを強化しています。
ここでは、カスタマーサクセスを実践するBtoC企業の事例をご紹介します。
スターバックスコーヒーは自社の店舗を、自宅と職場に次ぐ第3の休息空間(サードプレイス)と位置付けています。その場所で高品質なコーヒーを飲み、ゆっくりと落ち着いた時間を過ごすことを、同社は「スターバックス体験」と呼んでいます。
スターバックス体験を実現するために取り組んでいるのが、徹底したデータ活用です。
顧客に対してアンケート調査を行った結果、「レジでの待ち時間が長い」「いつも長い列に並んでいる」といった意見が明らかになりました。たとえスターバックスというブランドに価値を感じている顧客でも、注文時の待機時間が長くなるほどその日の体験が損なわれてしまい、ブランドイメージの棄損につながってしまう可能性があります。
そこで導入したのが「モバイルオーダー&ペイ」という仕組みです。スターバックスを利用する際にモバイルオーダー&ペイを活用し、事前にアプリで注文をしておくと、レジで並ばずに商品を受け取れます。
これまで列に並んで待っていた人は、後ろで待っている人を気にして落ち着かない気分になるケースもありました。新しいサービスの導入後、顧客は自分のペースで注文やカスタマイズができるようになりました。
参考:店舗でもデジタルでも考え方は同じ。スターバックス コーヒー ジャパンCMOに聞く、心を動かす体験の作り方|CX Clip
花王は、化粧品「ソフィーナ」や白髪染め「ブローネ」などのブランドにおいて、デジタルカスタマーサクセスの取り組みを推進しています。そのなかでも特に力を入れているのが、LINEアプリを活用したコミュニケーション戦略です。
花王のように、消費者を相手にビジネスを展開する企業の場合、一人ひとりの顧客を相手に関係性を構築するのが難しいため、カスタマーサクセスの実現は簡単ではありません。
そこで花王は、自社のLINEアカウントに顧客を招待し、1対1でコミュニケーションができる環境を整えました。社内に蓄積した顧客データをもとに、お肌のお手入れ方法や商品の選び方など、顧客に応じたアドバイスやパーソナライズした情報提供を行っています。
参考:花王のカスタマーサクセス部を大解剖 成功を導く3つの推進室|日経クロストレンド
顧客のリピート率を高め、習慣化してもらうための仕組みを「フックモデル」と呼びます。このフックモデルを活用して効果的なカスタマーサクセスを実現しているのが、東京ディズニーリゾートです。
東京ディズニーリゾートでは、1年を通して「記念イベント」や「○○周年アニバーサリー」を開催しています。人を動かすトリガーやきっかけが重要となるフックモデルにおいて、顧客の興味を引くイベントを多数開催することで来園を促しています。
参考:【感動】ディズニーランドの凄すぎるカスタマーサクセスを解説!|openpage
世界的なギターブランドであるFender(フェンダー)は、実店舗やオンラインショップを通じた商品販売に加え、2022年から「Fender Play」というサービスを提供しています。Fender Playはサブスクリプション型のオンライン動画視聴サービスで、定額料金でギターの弾き方を学べるのが特徴です。
これらの取り組みは、BtoBのカスタマーサクセスでいえばオンボーディングに該当します。オンボーディングは、製品を導入(ギターを購入)した直後の顧客に対して、使い方のアドバイスや機能の提案などを行う手法です。導入直後によくある顧客の悩みや疑問を解消することで、その後のサービスへの定着(ギターの再購入や関連商品の購入)が期待できます。
BtoC企業でありながら、オンボーディングをうまく活用した好事例だといえるでしょう。
参考:米でギター爆売れ フェンダーの楽器学習サブスクが日本で本格化|日経クロストレンド
ここまでご紹介した事例を踏まえると、カスタマーサクセスを成功させるためには「施策の実行」だけでなく、「どの状態を成功とみなすか」「どの指標で判断するか」を明確にすることが重要であると分かります。成功のポイントは次の6点に整理できます。
カスタマーサクセスの起点は、「顧客が成功している状態」を定義することです。
SmartHRのようにオンボーディング完了や継続利用を指標にするケースもあれば、freeeのようにヘルススコアや売上継続率をKGIとするケースもあります。
重要なのは、「解約していない状態」ではなく、「顧客が価値を実感し続けている状態」をどう定義するかです。例えば以下のような観点が判断材料になります。
成功状態が曖昧なままだと、施策が単なる“サポート業務”に留まり、成果に結びつきません。
多くの事例で共通しているのが、「導入直後の価値実感」を最重要視している点です。
SmartHRでもオンボーディングを重視し、初期段階で業務に組み込まれることを重要な成功条件としています。
このとき見るべき指標は以下です。
いわゆるTime to Value(TTV)を短縮できるほど、継続率や満足度は向上しやすくなります。
freeeの事例にあるように、顧客の状態は定性的な感覚ではなく、数値として可視化することが重要です。
ヘルススコアは単一指標ではなく、複数データの組み合わせで構成されます。
これにより、「問題が起きてから対応する」のではなく、「離脱の兆候を事前に検知する」運用が可能になります。
すべての顧客に同じ手厚い対応を行うことは現実的ではありません。そこで重要になるのがタッチモデルの設計です。事例でも見られるように、顧客規模やフェーズに応じて以下を使い分けます。
重要なのは「接触回数」ではなく、「適切なタイミングで適切な手段を選べているか」です。顧客セグメントごとの最適配分が成果に直結します。
カスタマーサクセスはサポート部門ではなく、「顧客理解の最前線」です。そのためVOC(Voice of Customer)は単なる記録ではなく、プロダクト改善の重要な入力データになります。
例えば以下のような活用が重要です。
このフィードバックループが機能することで、「解約を防ぐCS」から「プロダクトを成長させるCS」へと進化します。
カスタマーサクセスは単独部門では完結しません。営業・マーケティング・サポート・プロダクトのデータを統合することで、初めて顧客の全体像が見えます。
そのためにCRMやSFAなどの基盤を活用し、以下を統合します。
freeeのように事業部単位でCSを配置する場合でも、データ連携がなければ最適な判断はできません。「誰が見ても同じ顧客状態を把握できること」が全社連携の前提になります。
カスタマーサクセスでは、すべての顧客に同じ支援を行うのではなく、顧客規模やフェーズに応じて接触方法を使い分ける「タッチモデル」が重要になります。
ここでは代表的な3つのモデルを整理し、これまでの事例がどのタイプに該当するのかを見ていきます。
ハイタッチは、顧客ごとに専任担当がつき、個別ミーティングや伴走支援を行う最も手厚い支援モデルです。導入初期や重要顧客に対して、課題整理から活用定着までを1対1で支援します。
これまでの事例では、以下がハイタッチに該当します。
ハイタッチは、顧客の成功確度を高める一方で、人的リソースの投入が前提となる支援モデルです。
ロータッチは、個別対応と効率化の中間に位置する支援モデルで、メール・オンラインサポート・セミナーなどを通じて複数顧客に対応します。
該当する事例は以下の通りです。
ロータッチは、一定の個別性を保ちつつ、スケーラビリティを確保できる点が特徴です。
テックタッチは、FAQ、ヘルプコンテンツ、プロダクト内ガイドなどを活用し、システムや仕組みで顧客を自走させる支援モデルです。最も効率的に多数の顧客へ価値提供できる形態だといえます。
該当する事例は以下の通りです。
テックタッチは、顧客自身が課題解決できる環境を整えることで、CSの生産性向上とスケール化を実現します。
近年、カスタマーサクセス領域ではAI活用が急速に進んでおり、顧客理解・業務効率化・予測精度の向上など、多方面で活用が広がっています。
最新調査でも、カスタマーサクセスとAI活用の間に明確な相関が見られています。
バーチャレクスの実施した調査によると、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業では、AIをすでに本格導入・活用している割合が56.1%に達しています。これは、未実施企業(22.2%)の約2.5倍にあたる水準です。
さらに顧客対応領域におけるAI活用についても、カスタマーサクセス実施企業では62.4%が実際に活用しているとされており、未実施企業(23.3%)と大きな差が生まれています。
この結果から、カスタマーサクセスに取り組む企業ほどAI導入が進みやすく、顧客接点の高度化にもつながっていることが分かります。
AI活用が進む背景には、カスタマーサクセス特有の構造があります。主なメリットは以下の通りです。
特に重要なのは、「過去データの分析」にとどまらず、「未来の行動予測」や「優先度判断」までAIが担える点です。これにより、限られたCSリソースでも高精度なアプローチが可能になります。
こうしたAI活用型カスタマーサクセスを実現する代表的なソリューションのひとつが、当社HubSpotの「Service Hub」です。
Service Hubでは、以下のような機能によりAI活用型CSを支援しています。
これにより、カスタマーサクセスの現場では「属人的対応」から「データと仕組みによる支援」へと移行しやすくなります。
カスタマーサクセスについて、よくある質問を以下にまとめました。
単に「解約していない状態」ではなく、「顧客がサービスの価値を継続的に実感している状態」を指します。例えば、主要機能の利用率が高いことや、業務に定着していること、ヘルススコアやNPSといったKPIが安定している状態などが成功状態の指標になります。
この定義が曖昧だと、施策が単なるサポート業務に留まり、成果に結びつきにくくなります。
サービス導入直後は、顧客が最も不安や疑問を抱えやすいタイミングであり、この段階で価値を実感できないと継続利用につながりにくいためです。
そのため、初回ログインや初期設定完了、初成果までの時間(Time to Value)を短縮することが重要となります。
ヘルススコアは、顧客の利用状況やサポート履歴など複数のデータをもとに「顧客の健康状態」を数値化する指標です。ログイン頻度、機能利用の深さ、問い合わせ状況、契約更新意向などを組み合わせて構成されます。
これにより、問題が顕在化してから対応するのではなく、離脱の兆候を事前に検知し、先手を打ったアクションが可能になります。
タッチモデルは、顧客規模やフェーズに応じて接触方法を最適化する考え方です。
重要なのは接触量ではなく、「どの顧客に、どの手段が最適か」を設計することです。
バーチャレクスの調査では、カスタマーサクセスに取り組む企業の56.1%がAIを本格活用しており、未実施企業の約2.5倍に達しています。
AIは顧客の状態把握、離脱予兆の検知、問い合わせ対応の効率化、LTV最大化など幅広く活用されています。特に「過去分析」だけでなく「将来予測」にも使える点が重要で、限られたリソースでも高精度なCS運用が可能になります。
カスタマーサクセスは、単なるサポートではなく「顧客がサービスの価値を継続的に実感できる状態をつくること」が重要であり、そのために成功状態の定義から運用設計まで一貫した取り組みが求められることをご紹介しました。
また、導入直後の価値提供やデータ活用、組織横断の連携が成果を大きく左右する点も事例から明らかになっています。
カスタマーサクセスの成功に向けたポイントは以下のとおりです。
カスタマーサクセスは施策単体ではなく、「定義・データ・接点設計・組織連携・テクノロジー活用」を組み合わせて初めて成果につながる取り組みです。
本記事で解説した内容を参考に、自社のカスタマーサクセス設計にぜひ活用してください。
HubSpotの無料のカスタマーサービスソフトウェアを使用して、サポート体制の拡大と顧客維持を促進
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