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顧客満足度に関する完全ガイド

顧客満足度を測定、改善、管理し、ビジネスを成長させる方法をご紹介します。

顧客を満足させられなければ、ビジネスに未来はありません。

これはデータでも証明されている事実です。

成長している企業ほど、売上の停滞や減少への対応よりも、カスタマーサクセスを優先させる傾向にあります。また、自社の製品やサービスに満足した顧客は、自社の評判を広めてくれる最高の営業担当者にもなりえるでしょう。当社の調査によれば、昨年、自身の肯定的な顧客体験を他者と共有したと答えた回答者は全体の77%に上りました。

さらに、既存顧客の満足度を維持することは、長期的にも優れたビジネス戦略です。ビジネス知識としてよく言われることですが、新たな顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5~25倍にもなります

また、満足度の低い顧客体験や質の低いカスタマーサービスは、顧客離れの重要なバロメーターでもあります(そして、ビジネスの成長に甚大な打撃を与えます)。

HubSpotの作成した「マーケティング最新動向レポート決定版」(2018年版)によれば、マーケティングに関する最大の課題として、「トラフィックとリードの獲得」を挙げた回答者は61%に上りました。この回答からは、企業が抱えるもう1つの課題が透けて見えます。それは、既存の顧客の維持に苦労しているということです。

解約率の問題を抱えている限り、ビジネスの持続的な成長は絶対に望めません。そして、顧客離れの危険信号をいち早く察知できる方法こそが、顧客満足度の測定(および長期的な改善の取り組み)なのです。

人間中心のカスタマーサポート

当社は、顧客満足度を分かりやすく紐解き、あらゆる規模と種類の企業に測定指標を活用していただけるように、顧客満足度完全ガイドを作成しました。このガイドでは、顧客満足度の定義から、データを正しく収集しビジネスの成長に実際に活用するためのツールとヒントまで、包括的に取り上げます。

では、本題に入りましょう。最初から読み進めていただいても構いませんし、リンクをクリックしてお客さまに関連の深いセクションにジャンプしていただくことも可能です。

 

ビジネス用語の中には、あいまいで意味のはっきりしないものが少なくありません。顧客満足度も、そういった用語の1つです。

実際には、質問内容や調査の回答の尺度、回答の収集方法を変えて、さまざまな手法で調査を行うことが可能です。顧客満足度の調査は、取引直後に行う場合もあれば、期日を決めて顧客との関係構築の中で測定する場合もあります。使用する指標には、5段階評価のリッカート尺度やNPS®(顧客ロイヤルティー指標)などがあります。

実は、「顧客満足度」という呼び方についても賛否両論があります。この議論のポイントは、一般に、顧客満足とは「顧客が不満を感じなかったことを示すにすぎない」ということです。レストランで絶品料理を味わった後で、ゆったりとくつろぎ、ほほ笑みながら「今日の料理には、まあまあ満足できた」と言う人はいません。

つまり、目指すべきは、顧客を感動させるようなレベルなのです。

このガイドでは、言葉の意味に関する議論については掘り下げていません。しかし留意していただきたいのは、そこそこの体験ではなく、自社の熱狂的な推奨者になってしまうほどの体験を生み出せるよう注力することが大切だということです。

そのためには、顧客満足度(呼び方はいろいろあるにしても)の測定が依然として効果的です。

顧客満足度を測定する理由

顧客満足度を測定しない限り、不満を持った顧客を特定することはできません。また、誰が不満を感じているかが分からなければ、誰が解約するかも分からず、「なぜ」不満に思っているのかを突き止めることもできません。新たな顧客を獲得するペースよりも、顧客が離れていくペースの方が速ければ、ビジネスは破綻するでしょう。

→ダウンロード: カスタマーサービス測定指標計算用無料ツール

「管理し、最終的に改善するためには、まずは測定することから始めます。測定できないものを理解することはできません。理解できないものを管理することはできません。そして管理できないものを改善することはできないのです」 
― H. James Harrington氏

顧客と接触してフィードバックを得なければ、企業は「井の中の蛙」です。

正直なところ、新しい考え方を取り入れ、業界のトップを走る一流企業であっても、欠点や改善の余地は必ずあります。こうした企業が一流なのは、顧客満足度などの指標を測定し、そのデータに基づいて適切な行動を取っているからです。

改善のためにできることは何でも取り入れようとする姿勢であれば、測定のためのソリューションを導入して、データを収集するために、少しだけ時間を割く価値は十分にあるでしょう。決してマイナスにはなりません。いくつもの問題点を発見し、大幅なROI(投資収益率)の向上につながる可能性もあります。

今述べたことは、測定とデータに関する一般的な事実です。では具体的に、ビジネスの健全性を考える上で、顧客満足度が持つ重要性とは何でしょうか。

それは、顧客の継続につながるという点です。

ビジネスの長期的な成長にとって、顧客の継続率が最も重要な要素であることは、ほぼ間違いないでしょう。たとえ思い通りのスピードで新たな顧客を増やせたとしても、顧客に続けてもらえなければ、ビジネスを持続することはできません。

継続率は、CAC(顧客獲得費用)やLTV(顧客生涯価値)、口コミ、顧客ロイヤルティーといった、ビジネスのあらゆる面に影響を及ぼします。そして実は、こうした指標の比率(CAC÷LTV)も重要です。顧客を長期的に維持し、多くの価値を引き出せるほど、新規顧客の獲得に多くの資金を投じることができます。継続率はビジネスにおける「てこ」の役割を果たし、他のすべての要素に大きな影響を及ぼします。

まだピンとこない方のために、2つのデータをご紹介しましょう。

  • 82%の企業が、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持の方が低コストであると考えています。
  • 既存顧客のリピート購入の取引額は、新規顧客の購入額を67%上回っています。

顧客の維持はビジネスにメリットをもたらします。これについて、HubSpotで以前バイスプレジデントを勤めていたBrian Balfour氏次のように述べています

「ポイントは、顧客維持のために行う改善策はすべて、バイラリティー(拡散力)、LTV、投資の回収期間といった他の指標の改善にも役立つということです。顧客維持はまさにすべての成長の基盤であり、だからこそ何よりも重要なのです」

さて、顧客満足度の重要性と、それを測定すべき理由についてはご理解いただけたかと思います。次は、どのように満足度を測定するかを見ていきます。

顧客満足度を測定する方法

顧客満足度のデータを収集する方法を突き詰めると、顧客へのアンケート調査をするのが最適だという結論に至ります。

→ダウンロード: 顧客満足度アンケート作成に役立つ無料テンプレート5選

デジタル解析技術を使えば、ユーザーが目標について調査をしているかどうか、どのように機能を利用しているか、所定のタスクを完了する際にどのようなことで苦労しているかまで突き止めることができます。ただし、それらに対する顧客の感情的反応まで測定することはできません。

ここで秘策をお伝えします。顧客満足度を測定すると、顧客の感情的反応をうかがい知れるのです。

単にコンバージョン率と目標達成率で顧客体験を評価するなら、運転免許センターは極めて高い得点を獲得するでしょう。手続きを完了させるまで、立ち去る人が少ないからです。待ち時間は非常に長いにもかかわらず、電気自動車を購入する場合ほど離脱率は高くありません。

幸い、ほとんどの企業は、そうした目先だけの評価方法に意味がないことを認識しています。私たちは態度や行動に関するデータを組み合わせ、適切な条件でデータの分析を行っています。顧客体験を最適化し、顧客満足度を高めるには、それが適切な方法です。

皆さまは顧客アンケートをどのタイミングで送付していますか? また、どのような相手に送付していますか?

これは非常に重要な問題です。そしてその答えは、収集したい内容に応じて変わります。

顧客満足度の調査で最も多いのは、「~の状況において、お客さまはどのように感じましたか?」といった、極めて具体的な質問に対して回答を求めるものです。通常、靴下の購入やオイル交換など、単発の取引について尋ねるのに使用します。

このケースでは、できるだけ早い時点でアンケートを送るのが最善です。時間を置くほど、データの正確性が低下しやすいからです。人間の記憶は不可解な変化を起こし、感情や体験についてはそれが顕著に見られます。顧客体験に関する正確な反応を知りたければ、アンケートはすぐに送りましょう。

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一方、個人またはグループについて、顧客満足度の変化を調査し、時間の経過とともに満足度が改善しているかどうかを知りたい場合もあります。こうしたケースではタイミングを管理し、すべてのアンケートを一定の間隔(購入の直後、6か月後、2年後など)で送信するようにしましょう。こうすることで、コホート分析を行い、顧客満足度スコアの推移を確認できるようになります。 

では、どのような人を顧客満足度調査の対象とすべきでしょうか? 理想的なのは、自社と取引したすべての顧客を対象とすることです。手間をかけずに顧客満足度を調査できるなら、人数が多いに越したことはありません(もちろん、顧客に煩わしい思いをさせないように配慮しましょう)。

特定の顧客のみを抽出して、詳細な調査を行う方がよい場合もあるでしょう。この場合も、どのような情報を求めているかによって判断します。例えば、優良顧客が自社のどのような点を気に入っているかを知りたい場合は、一連の条件に該当する顧客のみを抽出し、調査を行う方が適切です。知見を得たい顧客のグループごとに、同じように詳細な調査を行いましょう。

次に、顧客満足度アンケートの内容について考えてみます。アンケートではどのような質問をし、どうやって満足度のスコアを判定すればよいのでしょうか?

この問いに答えるのは、いろいろな意味で簡単ではありません。人によってさまざまな考え方がある上、その考え方も常に変化しているからです。 

また、ある程度は、自社のビジネス目標に合わせてアンケートをカスタマイズする必要があります。皆さまの知りたいことは何ですか? また、成長や顧客離れの重要なバロメーターとして活用するには、どのような質問をする(そして、どのようなスコアを付ける)べきでしょうか? 

顧客満足度調査にはさまざまで、例えば次のようなものがあります。 

顧客満足度調査の例

次の例のように、Nicereplyのようなツールを使用した、NPS®調査の実施も可能です。

Nicereplyによる顧客満足度調査

また、Typeformのようなツールを使用すれば、シンプルで見栄えのよいNPS®調査フォームを作成できます。

Typeformによる顧客満足度調査

個人的には、分かりやすくてビジネスに活用しやすいシンプルなソリューションが好みなので、私自身はNPS®を使用しています。ただし、状況に応じて最適な方法は異なります。

自社のユースケースに合わせ、適宜カスタマイズするとよいでしょう。続いて、Google フォームを使用した、シンプルで機能的な顧客満足度調査の例を示します。

Google フォームによる顧客満足度調査
皆さまがアンケートの質問を考える際の参考となるよう、顧客満足度を測定するための選択肢や質問のサンプル(いずれも何らかの順序尺度を使用)をいくつか挙げておきます。

全般的な顧客体験に関するもの 

  • 〇〇社との取引には全体として非常に満足している。
  • 当社の全般的な評価を教えてください。
  • 当社の製品は、お客さまのニーズをどのくらい満たしていましたか?
  • 製品に関するお問い合わせに対し、当社からの回答は迅速に得られましたか?
  • 当社の製品を再度お買い上げいただく可能性はどのくらいありますか?
  • 知人や同僚の方にも当社を薦めたいと思いますか?(NPS®)

製品自体に関するもの

  • 製品の品質について評価をお聞かせください。
  • 製品の費用対効果について評価をお聞かせください。

質問は自由回答式にしても構いません(適切なソフトウェアやデータサイエンスを活用してセンチメント分析を行い、所定の方法で回答を定量化するのもよいでしょう)。 

  • 当社または当社のお客さま対応を、ひと言で表現してください。
  • 本日、当社製品を購入された理由を教えてください。
  • 当社のお客さま対応で改善すべき点があれば教えてください。

先ほども少し触れましたが、こうした評価には「順序尺度」を使用するのが一般的です。ごく簡単に言うと、順序尺度とは顧客の回答を所定の段階で評価することで、標準的なのは5段階(よく使用されるリッカート尺度など)または7段階になります。

リッカート尺度による顧客満足度調査の例

皆さまが選択に迷わないよう(どの手法が最善であるかについて学術的な議論が山ほどあるため)、ここでアドバイスがあります。それは、どれを選ぶかよりも、1つの手法を選択したら、それを使い続けることの方が大切だということです。また、数値そのものよりも、経時的な変化に注目しましょう。

このセクションの締めくくりに、顧客満足度(および顧客ロイヤルティー)の評価指標として非常によく使用されているNPS®(顧客ロイヤルティー指標)について説明します。

自社のNPS®スコアは、プロモーター(周りの人に紹介したいと回答した顧客)の割合から、デトラクター(批判的な意見の顧客)の割合を差し引くことで求められます。

NPS®スコアによる顧客満足度の評価

NPS®は現在、極めてよく利用されている指標で、特に急成長している企業で活用されています。HubSpotでも、お客さまと従業員の両方の満足度を評価するために、定期的に使用しています。NPS®はチームが一丸となり、顧客の満足度と維持率の向上を目指すのに役立つシンプルな指標です。

ただし、批判もあります。議論になっているのは主に、この指標が簡略化され過ぎて、維持率や顧客ロイヤルティーの予測の正確性に欠けるのではないか、という点です。しかし、完璧な顧客満足度指標は存在しません。そのため、そのデータをいかに活用するかが重要になります。ユーザーエクスペリエンスのコンサルタントであるCraig Morrison氏は、自身のブログであるUsabilityHourで次のように述べています。

「NPS®に関しては、正確性に欠けるだとか、役に立たないだとか、質問のフレーズに左右されるといった意見をよく耳にすると思います。

しかし、批判する前に、製品のユーザーエクスペリエンスを追跡するために、現在どのような取り組みを行っているか考えてみてください。

あらゆる手段を講じていますか? アンケートや聞き取り調査を行っていますか?

私の取引先のスタートアップ企業の多くは、何の取り組みも行っていません。NPS®にはデメリットもあるかもしれませんが、何もしないよりは、はるかに効果的です。

製品に加えた変更がユーザーエクスペリエンスにどのような効果をもたらしたかを追跡する上で、NPS®は最善の方法だと言えます」

私自身は、NPS®のシンプルさとビジネスへの活用しやすさを高く評価しています。また、常に自由回答式の質問(「そう評価した理由をお聞かせください」など)を添えて、定量的な測定を定性的な情報で補うようにしてもよいでしょう。

NPS®のもう1つのメリットは、NPSスコアを基準として自社と同業他社とを比較し、顧客満足度に関する自社の立ち位置を正確に把握できる点です。NPS®スコアを全社共通の顧客満足度指標とすることで、顧客中心の考え方を企業文化として定着させ、継続的なスコアの改善を全員の目標とすることができます。

簡単に言えば、顧客満足度には多くの測定方法がありますが、大切なのは、測定値の変化を長期的に追跡管理し、そのデータを実際の顧客体験の改善に生かすことです。評価方法が複雑すぎて、全社的に実施できなければ、有益な方法とは言えません。まさにその点が、NPS®のような単一の質問を使用する利点なのです。

 

ここまで、顧客満足度の重要性と満足度の測定方法の例を見てきました。当然、次は「顧客満足度を向上させるにはどうすればよいのだろう?」という疑問が浮かんできます。

これに関しては、絶対に確実と言える戦略は存在しません(残念ではありますが)。

ただし、短期間に成果を挙げるのに役立つ、基本原則と実績ある戦術をお伝えすることは可能です。以下にご紹介する方法が、皆さまの顧客体験を改善する第一歩となれば幸いです。

→ダウンロード: 顧客第一主義の実践に役立つ無料テンプレート

1. 顧客にフィードバックを求める

最低限必要となるのが、顧客が苦情を言いやすい環境を作ることです。

企業に直接フィードバックや苦情を伝えられなければ、顧客は不満の気持ちをSNSに投稿したり、友人に吐き出したりするでしょう。そうなると、顧客は2重の不満を抱えることになります。1つは顧客体験そのものに対して、もう1つは顧客体験の改善のために意見を述べる機会がないことに対しての不満です。

このことは、フィードバックツールとカスタマーサポートへの投資が必要であることを意味しています。

顧客のフィードバックを収集し、リアルタイムで対応するための仕組みがきちんと整っていれば、多くの場合、顧客がデトラクターとなることを阻止できます。そして素早く反応することで、肯定的な体験へと事態を好転させることも可能となります。

カスタマーサクセスの専門家であるLincoln Murphy氏は、この点について分かりやすく言い表しています

「そもそも、顧客がデトラクターとなるような状況を作り出さないようにしましょう。それには、顧客が最終的に何を望んでいるかを理解し、それを達成できるようにうまく運用しなくてはなりません。これは『カスタマーサクセス』とも呼ばれます。

機能の要望や不具合の報告、サポートチケットの発行、サポートチームとのチャットなどを通じて、顧客が思い立ったときにフィードバックできるような場を提供してください。

NPS®調査を、顧客フィードバックの唯一の手段や機会にするのはやめましょう。

また、先ほど挙げたような他のフィードバック手段が用意されていることを、継続的に周知しましょう。

こうすることで、デトラクターが生まれたときには何か正当な理由があり、たまった不満を吐き出しているわけではないと考えられます。つまり、完全に否定的な気持ちがあるからではなく、単にはけ口がないから感情的になっていることを理解できるのです」

顧客の不満を軽減するには、さまざまな方法があります。その1つがウェブチャットです。近年、このテクノロジーは急速に進化しつつあり、大量の顧客やターゲティングに対応できるようになったほか、レポート機能も加わっています。その他の方法として、Usabillaのような企業が提供するフィードバックフォームを使用することもできます。

不満を感じた顧客の大半は、その気持ちを抱えたまま離れていき、企業側はそれに気付くことができません。その後、そうした顧客が自分の経験を友人に話し、情報が拡散され、会社の評判を落とすことになるでしょう。否定的な口コミを企業側が止める方法はありません。AllBusiness.comでは次のように述べられています。

「不満を感じたとしても、わざわざ苦情を言う顧客はほとんどいません。単にその企業との取引をやめてしまいます。しかし、それだけでは収まりません。企業に対しては何も言わなくても、友人には確実に話して回るからです。専門家によれば、企業の対応に腹を立てた顧客は、平均9人の知人にそのことを話すといいます。

こうした事態に、企業はどう対処すればよいのでしょうか? 質の低い顧客体験によって顧客を失わないためには、顧客が苦情を言いやすくしておく必要があります。そうです。苦情を快く受け付けることをアピールしましょう。苦情を言う顧客は少なくとも、わざわざ問題点を指摘するほど、その企業との関係を気にかけているということを忘れてはなりません」

顧客満足度 – 不満を感じた顧客のチャット

顧客フィードバックの収集自体に大いに価値があり、多くの企業では対策の強化が必要です。ただし、フィードバック収集には複雑な面があり、企業が犯しやすいミスもあります。アンケート設計と顧客フィードバックの専門家であるMatthew Champagne博士から、こうしたミスを避ける方法について、極めて包括的なアドバイスを頂きました。

「自分のお気に入りの企業の改善にぜひ協力したいという顧客は非常にたくさんいます。しかし、企業側がそのチャンスをことごとくつぶしています。意図が見え透いた質問をしたり、形ばかりの報酬を提供したり、不適切な質問をしたりしている企業が多すぎます。アンケートのタイミングが遅すぎて記憶があやふやになっている場合や、アンケートの回答に手間がかかりすぎる場合も見られます。

顧客満足度に関し、企業は常に「検死解剖的なアプローチ」を取っています。つまり、事後に何が悪かったのかを突き止めるという方法です。顧客に質問をするのは、その事柄が顧客にとって重要な意味を持ち、顧客のフィードバックを反映することで変化を起こせるうちでなくてはなりません。

アンケートに答える動機として、顧客にとって重要な点は3つしかありません。1つ目は、自分の意見に耳を傾けてもらえているか。2つ目は、自分の意見が改善に生かされるのか。そして3つ目は、他の顧客と比べて自分が特別扱いしてもらえているかということです。しかし多くの企業は、それを重視する代わりに、抽選でありきたりなプレゼントを提供して(しかし当選する可能性は限りなく低い)、お茶を濁し、顧客をいら立たせています。

企業側の意識は1999年で止まっているのです。『当社の製品およびサービスの向上のため、アンケートにご協力ください』という依頼に、20年前でも顧客は応えてくれなかったのに、現代の知識豊富な顧客が応えてくれるはずはありません。有用な回答を得るためには、自己中心的な理由からアンケートに答えてもらおうとするのではなく、顧客に対して内面的な動機付けを与える必要があります。

アンケートでは『顧客全体を代表する意見』を集めることが最も重要ですが、そのことを意識している企業はほとんどありません。顧客の3%、あるいは10%から回答を得たとしても、『物言わぬ中間層』の意見を集められなければ意味はありません。多くの企業は、自社の顧客の主体となる層とは異なるデータしか持っていないため、不適切な調査結果に基づいて、誤った対応をしています。これが、一流に届かない企業が多い理由の1つです」

2. 顧客に知識を提供し、すぐ疑問に答える

顧客からのすべての質問に対し、よく寄せられる質問集、またはインターフェイス内やドキュメントなどを通じて、顧客自身が質問の答えを見つけられるようにしておきましょう。

製品の使用中やウェブサイトの閲覧中に、疑問点や懸念事項に対する答えが見つからないときほど、ストレスがたまることはありません。ご自身でもこれまでに何度そうした思いを経験し、ウェブチャットなど、疑問を解消するための方法を探そうとして無駄に終わったかを考えてみてください。挙げればきりがないはずです。

こうした問題の解決策は2通りあります。

1つ目は何をおいても、ユーザーエクスペリエンス(UX)の調査を実施することです。何回かユーザーテストを行い、(Hotjarなどのツールを使用して)ユーザーの操作を再現してみるだけで、それまで気付かなかったUXの問題点に嫌というほど気付かされるでしょう。新たな事実に不安になる反面、有用な情報が得られて、今後に生かせることは間違いありません。

顧客満足度 – GoToMeetingユーザーテスト

画像出典

その後、すぐに成果を達成できる目標を確実にリストアップし、優先的に改善していくことをお勧めします。

2つ目の選択肢は、スマートなコンテンツやドキュメントを活用することです。カスタマーサポートをはじめとして、顧客とのあらゆる接点で問い合わせに対応する際に、よくある質問や苦情(および発生状況)を必ず書き留めておき、分類し、定量化するようにしましょう。このデータは、ヘルプドキュメントの作成計画を固めるための基盤となります。

ユーザーはどこで、どのような点に苦労しているでしょうか? ユーザーの疑問がコンテンツでリアルタイムに解消できるようにして、サポートに問い合わせなくても済む状況を作り出すにはどうすればよいでしょうか? HubSpotではこうした問題への対処法として、HubSpotヘルプセンターのナレッジベースでユーザーガイドを提供しています。

顧客満足度完全ガイド_03

最後に、スマートなカスタマー サポート チャネルについて見ていきましょう。問い合わせ先情報を分かりやすい場所に表示することに加え、ウェブチャットを設置することがウェブサイトを構成する上で不可欠になってきています。

顧客満足度完全ガイド_01

最近ではほとんどの企業に対して、ウェブ チャット ソフトウェアが求められるようになりました。このことは統計情報からも明らかです。

  • 顧客の63%が、チャットの設置されたウェブサイトの方が、そうでないウェブサイトよりも再訪問する可能性が高いと回答しています。
  • 回答者の44%が、オンラインショップを運営する企業にとって、ウェブチャットによるサポートは特に重要な要件の1つであると答えています。
  • 顧客の79%が、ウェブチャットを好む理由として、すぐに回答が得られる点を挙げています。

関連する調査のほぼすべてで、ウェブチャットはカスタマーサービスで最も好まれるチャネルであることが証明されており、ウェブチャットへの期待は高まる一方です。

さらに、チャットボットや人工知能を使ったソリューションなど、まったく新しいジャンルのサポートチャネルも誕生しています。HubSpotでのチャットボットの活用事例も、参考にしていただければ幸いです。

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3. SNSを活用する

顧客満足度は必ずしも、企業側に直接、明白に伝えられるものではありません。顧客は、レビューサイトやSNSといったサードパーティーのチャネルで、自身の顧客体験を共有している場合が少なくないからです。

SNS上で自社の顧客のアクティビティーを継続的にモニタリングしておくと、自社ブランドに関する肯定的・否定的なフィードバックの両方を、さらに詳しく把握することが可能になります。また、同様のフィードバックへの対処に備えておくことで、全体的な顧客満足度を高める効果もあります。

SNSをカスタマー サービス ツールとして積極的に活用するかどうかにかかわらず、24時間以内にフィードバックに対応できるように態勢を整えておきましょう。対象となるチャネルとしては、Facebook MessengerやTwitterのほか、InstagramやLinkedIn内のコメントが挙げられます。ソーシャル リスニング ツールHubSpotなど)を使用すると便利です。

SNSを活用し、顧客フィードバックを先回りで収集し顧客満足度を測定することもできます。顧客が、急を要する質問や懸念事項の相談ができるようなウェブチャットやQ&Aセッションを検討しましょう。カスタマー サービス チームや営業チームへの問い合わせ窓口を設けるだけでも構いません。

SNSの利点は、顧客の望む任意のチャネルを通じて接触することで、その過程で顧客の満足度を高められる点にあります。

4. 製品の使いやすさを高める

使いやすさは顧客体験を左右する重要な要素です。それにもかかわらず、顧客満足度の観点で、使いやすさが重視されている製品はあまり多くありません。

私たちは製品に充実した機能を搭載することや、その製品で何ができるかについては検討しますが、ユーザーがそのプラットフォームの使い方を習得しなければならないことについては忘れがちです。その事実は往々にして、製品の使いにくさにつながっています。

非常に使いやすい製品は、手放せないものです。

Facebookをはじめ、つい長時間使用してしまうアプリでは、この点がよく理解されています。こうしたアプリは極めて簡単に操作できるため、(内面的または外面的な)きっかけさえあれば、すぐに使い始めることができます。

前向きかつ健全なミッションを掲げる企業も、この点についてよく配慮しています。こうした企業の全体的な目標は、行動の習慣化だからです。

私はAmazonが大好きですが(財布のひもは緩みっぱなしです)、その理由は購入方法が実に簡単だからです。ワンクリックで購入できるので、つい買いすぎてしまいます。

顧客満足度 – Amazonの[今すぐ買う]ボタン

5. 顧客を感動させる

顧客を満足させることは最初の目標としては良いのですが、本当に目指すべきは、顧客を歓喜させ、感動させることです。

少なくとも、著名投資家のウォーレン・バフェット氏はそうアドバイスしているので、的を射ていると言ってよいと思います。

バフェット氏は次のように述べています

「顧客を感動させることができた会社は、人件費のかからない営業担当者を手に入れたも同然です。こうした顧客は、見えない所で常に自社に関する情報を広めてくれます」

ただし、具体的な戦術に関しては一概にアドバイスはできません。絶対に顧客を感動させられる戦略など存在しないからです。注目を集めるには、当然ながら、通常とは少し違うことをする必要があります(そして単純に、顧客を煩わせないことも重要です)。 

靴の通販会社のZapposや、Amazonのような一部の企業は、この点を経営理念の中核的な要素として組み込んでいます。全社一丸となって顧客を感動させようと真摯に取り組めば、個々の戦術は気にしなくても、アイデアは自然と湧いてきます。 

優良顧客にホバーボードのようなちょっと変わったプレゼントを贈るのも面白いですし、(Zapposのように)ギネスブックの新記録を達成するほど長い時間をかけてカスタマーサポートに徹してもよいでしょう。また、マーケティングパートナーに手書きのお礼状を送り、心からの感謝を伝えることもできます。いずれにしても、顧客を感動させることができれば、業績に驚くべき変化がもたらされるはずです。

6. フォーカスグループを活用する

フィードバックを共有するために、さまざまなチャネルを顧客に提供することと、フィードバックを(対価を支払って)先回りで収集することはまったく別のことです。フォーカスグループとは、ターゲットオーディエンスの該当者や優良顧客を複数集め、建設的な批判を収集することを目的とした調査アプローチです。 

フォーカスグループからは、率直な回答を得ることができます。さまざまな事柄に関し、突っ込んだ質問をする機会を得られ、回答者の関心を保ち続けたまま、自社のオーディエンスのざっくばらんな意見を聞けるのが特長です。レビューやフィードバックは、多くの場合、編集済みの「きれいに整えられた」回答になっています。フォーカスグループは対面で行います。そのため、しぐさなどに表れる非言語的な反応も含めた、何も調整されていない、生のフィードバックや批判を収集することが可能です。

顧客満足度の改善策を見極める上で、こうした回答は特に有用なツールになるでしょう。 

7. 競合企業について研究する

不満を感じた顧客は、他社に乗り換えるでしょう。自社に満足できなかった顧客はどのような企業に向かうでしょうか? 競合企業について研究し、その企業の顧客(または皆さまの顧客)をどうやって満足させているのかを理解しましょう。

競合企業の施策の長所と短所を分析してみると、皆さまの顧客、業界、製品について多くの気付きを得られます。他社のウェブサイトにアクセスし、オンラインのカスタマージャーニーを研究してみてください。また、競合企業が実店舗を運営している場合には、店舗に出向き、どのような接客を行っているかを確かめましょう。他社の営業チームやカスタマー サービス チームに連絡し、既存顧客や潜在顧客とどのようにやり取りしているかを確認するのも効果的です。

皆さまは、他社の対応に感動しましたか? もしそうなら、皆さまの顧客も同じように感じるはずです。新たな方法を取り入れて、自社の顧客満足度の向上に努めてください。

顧客満足度の測定ツールとソフトウェア

Access Now: Customer Support Strategy Template [Free Tool]

さて、顧客満足度を重視すべき理由と、その測定方法(および改善方法のヒント)については既に説明しましたので、続いては顧客満足度の測定と改善に役立つ、実際のツールとソフトウェアを紹介していきましょう。

顧客満足度の測定ツール

最初に決めておく必要があるのが、顧客満足度のデータを収集する方法です。目標に応じて、顧客アンケートによって収集する場合や(アンケートの送付方法にも複数の選択肢があります)、アプリ内アンケートを使う場合もあれば、サービス提供後にアンケートを行う場合も考えられます。また、顧客への聞き取り調査を行ったり、項目数の多いフォームを使った調査を行ったりすることも可能です。

私としては、アプリ内やウェブサイトで直接アンケートを実施する方法で、ユーザーエクスペリエンスの重要な節目の直後に実施するのがよいと思います。例えば、写真共有アプリを提供している場合、ユーザーが初めて写真をアップロードした直後にフィードバックを求めるメッセージを表示するとよいでしょう。同様に、eコマース(電子商取引)サイトの場合は、購入直後にアンケートを実施すると、記憶が新しいうちに感想を聞けるので理想的です。

フィードバックの収集ツールにはさまざまなものがあり、市場では毎日のように新たなツールがリリースされています。現在利用可能なツールで、主要なものをご紹介します。

特定のユーザーグループや特定の期間について調査したい場合には、Eメールによるアンケートの送付を検討するとよいでしょう。一般に、多くの顧客データを収集できるのも、この方法の特長です(欲張りすぎることがないように注意してください。たとえ回答者に報酬を提供する予定でも、長いアンケート調査の入力は回答者の負担になり評価が中央値に偏り、当たり障りのない回答になる「中心化傾向のバイアス」が生じやすくなります)。この分野のお薦めツールは次の通りです。

ただし、この他にも顧客アンケートのツールはちまたにあふれています。Googleで少し検索するだけで、そのことを実感していただけるでしょう。すべてのツールを比較検討するのは難しいので、Google フォームやSurveyMonkeyといったシンプルなツールを使用することをお勧めします。ただし、いっそう詳細な調査を行いたい場合には、顧客アンケートソフトウェアについて詳しく説明した記事(英語)をご参照ください。

顧客満足度の測定指標と測定手法

使用する具体的なツールとアンケートの実施タイミングを決定するほかに、顧客満足度を測定する手法についても検討する必要があります。こちらも、選択肢は豊富にあります。

まず、このガイドで既に述べたように、シンプルさと実用性によって広く利用されているのがNPS®です。意思決定の改善に生かせなければ、データを集めても役に立ちません。その点、NPS®は予測的妥当性と実用性の両方に優れていると思います。見方も分かりやすいので、組織内に導入するのも非常に簡単です。

同様に、「単一の質問」で満足度を測定する他の方法として、SUS(システム ユーザビリティー スケール)やCSAT(顧客満足度指標)があります。CSATは最も一般的に使用されている顧客満足度の測定方法であり、おそらく最も分かりやすい方法でしょう。

顧客満足度 – CSAT

画像出典

調査方法はシンプルで、顧客に自社、製品、サービスに関する満足度を評価してもらうだけです。評価の尺度は、3段階、5段階、10段階があり、どの尺度が最適であるかについては、研究者の間でも意見が分かれています。

どの尺度を使用すべきかを、長い時間をかけて検討してもあまり意味はありません。それよりも、チーム全体が納得できる尺度を採用したら、それを使い続けることが大切です。完璧に測定することよりも、ベースラインを確立して改善していくことを重視しましょう。

CES(顧客努力指標)も、よく使用されている「単一の質問によるアンケート」の測定指標です。CESでは、シンプルに顧客の満足度を質問する代わりに、製品の購入または製品での特定の作業や操作が、どれだけ簡単だったかを質問します。

顧客満足度 – CES

画像出典

このスコアは、CSATやNPS®と比べて消費者行動の予測性に優れているように思われますが、CESの場合も、細かい仕様については研究者によってさまざまな意見があるため、自社が活用しやすいものを選択することが大切です。

将来的に、さらに複雑な調査が必要になった場合には、質問を追加することも可能です。

顧客満足度調査の例

とはいえ、通常はシンプルさを維持することが成功への近道です。長いアンケートは回答者に敬遠され、正確なデータを集める上でも得策ではありません。込み入ったアンケートを作成する場合には、アンケート設計の専門家の力を借りることを検討する必要があるかもしれません。

顧客満足度の向上に今すぐ着手しよう

顧客満足(顧客感動、顧客ロイヤルティーなど)は、ビジネスの健全性を維持する上で極めて重要な要素です。満足度の低い顧客は自然と離れていくでしょう。顧客離れの激しい企業は長期的な競争力が低下し、やがて淘汰されます。

このガイドでは、顧客満足度の定義とその測定方法について説明し、顧客満足度を向上させるためのアイデアをご紹介しました。ただし、ここで示した情報は出発点にすぎません。次は皆さま自身が、お伝えした測定戦略を実践し、顧客満足度向上プログラムを実行に移す番です。顧客満足度に関わる取り組みを繰り返し、新たな考え方を取り入れていけるかどうかは皆さま次第です。

自社のビジネスの成長は、その取り組みにかかっています

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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